MUSIUM DISCUSSION「2015年、何が起きていた?」Chapter.2〜フェスと4つ打ち〜

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皆さんにとって2015年の音楽シーンはどうでしたか? 「4つ打ち」「シティポップ」「PA裏族」「ストリーミングサービス」など、2015年になってからよく耳にしたワードもたくさんあって、新鮮な風が吹き、可能性を感じたり追求心を掻き立てられる出来事が多かったように感じます。そのような1年間言われ続けたワードについての思考や、「音源がお金にならない!?」「メロコアの復活!」「ダンスミュージックって何!?」という疑問やシーンのトピックスを掲げて、好きな音楽も趣味志向もバラバラなMUSIUM編集部の11人が鹿野淳の司会のもと、2015年の音楽シーンを様々な着眼点を交差して話し合いました。
本日は第2回目。「フェスと4つ打ち」について。音楽リスナーであるからこそ見えたシーンの変化と進化を、一緒に考えてみませんか?

 

【MUSIUM DISCUSSION 「2015年、何が起きていた?」】

▶︎Chapter.1 〜2015年シーン総論〜

▶︎Chapter.2 〜フェスと4つ打ち〜

▶︎Chapter.3 ~ニューカマー~

▶︎Chapter.4 ~EDM、ブラックミュージック。「踊る」ということについて~

▶︎Chapter.5 ~サブスクリプション、SNS。僕らは音楽をどう聴くのか〜

▶︎Chapter.6 〜そして、2016年へ〜

 

【2015 REVIEWS総集編】

▶︎編集部が選ぶ2015年を象徴するアーティスト11選

▶︎編集部が選ぶ2015年私達を躍らせた音楽12選

▶︎編集部が選ぶ2016年の音楽シーンを予感させるアーティスト10選

▶︎編集部が選ぶ2016年に注目したいアーティスト11選

 

 

スライド2 (1)

4つ打ちの飽和

小澤「2015年の音楽シーンは一言でいうと『フェスシーンと4つ打ち』がキーポイントになったと思うんです。アーティストの戦う場所がCDからライヴへ、特にロックフェスに変わりましたよね。その中でも『4つ打ちの飽和』を感じた1年でした。今フェスシーンを斡旋している4つ打ちを主流としたライヴで盛り上げるための音楽は、2013年にKANA-BOONの“ないものねだり”から始まって、ゲス(ゲスの極み乙女。)キュウソ(キュウソネコカミ)というバンドが続きました。その後を追うように出てきたKEYTALKTHE ORAL CIGARETTESで、4つ打ち系とも言われているバンドはもう飽和してしまったんじゃないでしょうか?そしてこれ以上シーンは大きくならないのではないかと思ったんです」

 

 KANA-BOON / ないものねだり

 

 

ゲスの極み乙女。”キラーボール” (Official Music Video)

 

山吹「私も今のテンポが速い4つ打ち音楽のブームは、今年がピークじゃないかと思いますね。それは本人達も理解していて、生き残りたいという意識がゲスとKANA-BOONの『4つ打ちから脱却』という音楽性の変化に繋がったのではないかなと思います。だから、方向性を変えていこうとしているKEYTALKTHE ORAL CIGARETTESもメロディーに力を置いていますしね」

 

小澤キュウソKEYTALKも単に4つ打ちをして盛り上げるだけでは生きていけない、という思いからの進化を感じるんです。このような現象を見て、邦ロック界で4つ打ちの伸びしろはもうないと思いました」

 

THE ORAL CIGARETTES「狂乱 Hey Kids!!」MusicVideo

 

 

4つ打ちバンドの今後

──では、4つ打ちがすでに飽和していると仮定しますね。そのアーティスト達は具体的にどうやって生き残っていけばいいと思いますか?

 

小澤「例えばKANA-BOONは盛り上がる場を提供するバンドだったけど、今年はNARUTOとのタイアップやCMソングに起用されたりMステに出演したりして、新しい挑戦とともに世間に認められるバンドに少しずつ変わっていっていると思うんです。要するに、フェス・ライヴだけのシーンからお茶の間に近づきたいという願望ですよね。同じようにゲスも4つ打ちじゃない曲を多く発表したり、KEYTALKはテンポを落としたり。彼らも4つ打ちバンドと呼ばれているけど、その枠から抜け出してお茶の間へ進出しようとしてますね。」

 

バンドの世代交代?

野口「暴論かもしれないけれども、僕は4つ打ち系でもキュウソネコカミというバンドは尾崎豊さんと世代交代したと思っているんです。キュウソネコカミの“DQNなりたい、40代で死にたい”の歌詞に<ヤンキー怖い>ってあるじゃないですか。尾崎豊さんなら<教師を訴える>って歌詞にしていたと思うんです。つまり、学校の頂点に位置する教師を訴える尾崎豊さんの「反教師」は、教室の頂点に位置するヤンキーを恐れるキュウソの「脱スクールカースト」に世代交代したと思うんですね。スクールカーストってう、ヤンキーやギャルがいる上位の軍と、そこまで目立たない中位の軍と、オタクやいじめられっ子がいる最下層の軍で成り立つピラミッド構造の中で、キュウソのリスナーはヤンキーの下にいる中位の軍にいるような見た目の人が多くって。スクールカーストの重い空気からフェスに脱出して、その苦しみを代弁しているような気がします」

 

──他にも世代交代したバンドがいると思う人はいますか?

 

荒池「他に面白い表現していると感じるアーティストを挙げると、レキシだったり、水曜日のカンパネラなどだと思っていて。彼らは音楽的には真面目だけどメッセージ性は基本的にないし、ないことを売りにしていますよね。キュウソは面白いけれども、実はシリアスさが後ろにあるっていう面白さもあって。結局キュウソって今の時代のシリアスさを笑いに変換しているんだと思います」

 

レキシ – SHIKIBU feat. 阿波の踊り子(チャットモンチー) Music Video +「Takeda’ 2」 Rec映像

 

 

水曜日のカンパネラ『小野妹子』

 

 

キュウソネコカミ – 「泣くな親父」MUSIC VIDEO

 

 

野口「その他だと、KANA-BOONも世代交代したバンドじゃないかなぁと。KANA-BOONをVIVA LA ROCKで観た時、お客さんの雰囲気がBUMP OF CHICKEN(以下,バンプ)のお客さんと結構似てたなと思いました。逆にASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)には似ていない。KANA-BOONのお客さんはKANA-BOONだけ聴いてる感じがしたんです。4つ打ちとして彼らを聴いていない。彼らの音楽の、『辛い時や悲しい時に部屋にこもって聴きたい』感じっていうのが、バンプを聴く時のリスナーの心情とか聴く姿勢と似ているんじゃないかなと思ったんです」

 

今井「言うならば歌詞的なメンタリティの孤独さですよね」

 

──その通りなんです。実はKANA-BOONは、アジカンのようなギターロックのサウンドを自分達のアピールポイントとしているロックバンドとは違う位置にいるバンドなんですよね。

 

小澤「インタヴューとかでKANA-BOONの谷口鮪(Vo&Gt)さんのメンタリティとか人生を考えると、究極の孤独ロックを作らざるを得なかった人なのかなと感じました。それが歌になっているというのも、今のロックバンドの求めているものと繋がっているのかもしれないですね」

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『Opera Glasses / オペラグラス』

 

 

BUMP OF CHICKEN「Hello,world!」

 

 

4つ打ちは楽しむための道具?

──他に4つ打ち、フェスシーンについて何か意見ありますか?

 

畠山「2015年の音楽シーンを見てみると、多くのライヴやフェスでは、アーティストを観ずに、一体感を楽しむことを目的としている人が多いと感じることが何度もありましたね」

 

──それはステージが見えないPAの裏で踊り狂う、通称「PA裏族」みたいな話ですね。

 

畠山「そうですね。しかもステージ前の柵の方でも同じことが起きているのを見るんですね。ライヴを観るというより、踊ったり暴れたりするために来ている人が多いのではと感じることがあるぐらいです。まるでライヴハウスやフェスの会場が、クラブのような場所になっているんじゃないかと感じました」

 

──その状況をどう思っていますか?

 

畠山「良いか悪いかで考えたら、客層が広がったという意味では良いと思ってます。ライヴ・フェスシーンでより多くの人が観やすい環境になったともいえるかなと。逆に、アーティスト側からしてみたら悪いことなのかなという思いもありますね。例えばあるフェスの会場で、KEYTALKのライヴ中にアイドルファン達がふざけて、最前でオタ芸を始めたんです。それが周りの観客の癇に障って問題になったんですよ。KEYTALK自身もお客さんが嫌な思いをするのは嬉しくないですよね。自由に踊るといっても、きっとアーティストはお客さんに求めるモノがあるのではないかなと思っていて。自分達を見てもらいたいという思いが。だから、アーティストにとっては悪いことでもあるのかもしれませんね」

 

KEYTALK – 「YURAMEKI SUMMER」MUSIC VIDEO

 

 

これからのフェスの存在は……

野口「そういうお客さんとアーティストの関係とか流れっていうのは、ここ5年間で多くの変化があったと思うんですけど、来年以降も続いていく永遠のテーマだなと思いますね。特に今はライヴやフェスといったイベントが主戦場となっていて。その中で起こっていくことが、今後のシーンの動向を左右していくんだとしたら、なおさらそういうことが続いていくんじゃないかなぁ」

 

今井「今年は特に、去年から言われ続けているシティポップの新人達がそのカウンターとしてでてきた感じもしますよね」

 

木村「そう思います。シティポップといわれるシーンが盛り上がったのは、音楽ジャンルのボーダーレス化が原因ではないかと思います。ポップスやロックといったジャンルでしっかりと分けられていた状況から、音楽性と存在性が曖昧で垣根がなくなったシティポップといわれる音楽が人気になったのではないかと感じました」

 

 

結城「音楽ジャンルのボーダーレス化が進んだことで、エンターテインメント界でも音楽はイベントとして捉えられるようになったんじゃないかなとも思いました」

 

──なるほど。もう少し詳しくお願いします。

 

結城「例えばお笑い芸人、アイドル、バンドが一緒に出演しているやついフェスのようにサブカルチャー間でのジャンルを超えたイベントが多くなってきて、それは今後も増えるといいなぁと思っています。ネットやSNSの影響で音楽がフリーなものになるのと同時に、人々の音楽に対する意識がライトになってきていることが理由の1つじゃないかなぁと。それに伴って、これから音楽といろんなものを結びつけたイベントがさらに多くなるんじゃないかなと思った1年でした」

 

▶︎▶︎次回Chapter.3のMUSIUM DISCUSSIONは、「ニューカマー」がテーマです。新進気鋭のバンドやアーティストが多数登場します!

 

 

【MUSIUM DISCUSSION 「2015年、何が起きていた?」】

▶︎Chapter.1 〜2015年シーン総論〜

▶︎Chapter.2 〜フェスと4つ打ち〜

▶︎Chapter.3 ~ニューカマー~

▶︎Chapter.4 ~EDM、ブラックミュージック。「踊る」ということについて~

▶︎Chapter.5 ~サブスクリプション、SNS。僕らは音楽をどう聴くのか〜

▶︎Chapter.6 〜そして、2016年へ〜

 

【2015 REVIEWS総集編】

▶︎編集部が選ぶ2015年を象徴するアーティスト11選

▶︎編集部が選ぶ2015年私達を躍らせた音楽12選

▶︎編集部が選ぶ2016年の音楽シーンを予感させるアーティスト10選

▶︎編集部が選ぶ2016年に注目したいアーティスト11選