MUSIUM、フェスを語る。「フェスってこの先どうなる?」~都市型編~

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2016年も、さまざまな音楽や想いが交差した音楽フェス。
「夏フェス」という言葉が、音楽コアファン以外にも浸透していくのと同時に、夏の「4大フェス」以外にも、春フェス、冬フェスに該当されるフェスや、アーティスト主催の個性が尖ったフェス、地方フェスなど多種多様な音楽フェスが、今年もさらに多く音楽シーンを彩りました。
今回は様々なフェスを、「自然型」「都市型」「特殊型」の3つに分類。そのうち首都圏近郊で行われた「都市型」フェスについて、実際にフェスに参加したメンバーが考察しました。

 

「MUSIUM、フェスを語る。『フェスってこの先どうなる?』〜自然型編〜」

「MUSIUM、フェスを語る。『フェスってこの先どうなる?』〜特殊型編〜」

 

 

2016 都市型フェス対談

小山「まず始めに、SUMMER SONIC(以下、サマソニ)を代表とする都市型フェスと呼ばれるスタイルは、FUJI ROCK FESTIVAL(以下、フジ)やROCK IN JAPAN FESTVAL(以下、ロッキン)に代表される自然型フェスなどと比較してどう位置付けられるのか、その特徴について話していきましょう。

特徴の1つ目にアクセスの良さが挙げられると思います。首都圏から1時間~1時間半程度で行けてしまう距離感は魅力です。極端な話、鞄ひとつでふらっと行けちゃうし。サッと行ってサッと帰って来れるのが都市型の特徴かなと。身構えずに行ける」

 

古川「空気感よりも音楽を楽しむというスタンスも、都市型で多く見られる特徴だと思います。自然型のフェスは、日常から切り離された開放感が魅力的だと思っていて。一方で、都市で行われるフェスでは周りに建物が見えたり、コンビニがすぐ近くにあったり、開放感は弱いと思うんです。だからその分、空気感を味わうより日常空間の中でもがっつり音楽を楽しみたい、という感覚で行く方が多いのかなと感じます」

 

小山「確かに。フジとかロッキンは家族や仲間内でテントを張ってゆったり楽しむっていう風景がすぐ思い浮かぶけど……。サマソニは少人数で、一日中いろんなステージを練り歩いてるイメージがありますよね」

 

小澤「そういう面で、年齢層にも特徴があるんじゃないかなと思います。今年は自然型のロッキンにも行きましたが、ロッキンはサマソニに比べて、子連れの人が桁違いに多い。サマソニは友人同士やカップルなど、服装も含めてお出かけ感覚の若い人が多い印象でした。都市型フェスの構造が若年層向けなんじゃないかなと思いました。サマソニに出てたRADIO FISHとかは本当に若者向けですし。BEACH STAGEっていう砂浜の会場だったんですけど、ほぼ水着のお姉さんとか強面お兄さん沢山いましたよ(笑)」

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小山「確かに他のフェスでは観られない光景ですね。ロッキンはテントで本拠地を作って、アーティストを観たいときにステージ、他はテントでのんびり過ごす。対して都市部で開催となると、一日中歩き回るっていうのはかなりハード。特に小さい子がいる家族連れには大変な部分が多いかもしれませんね。あとサマソニのごちゃ混ぜ感とか、装飾から感じる近未来感、都会感っていうのは若い人向きではありますよね」

 

小澤「あとは現時点で都市型を選ぶ人の理由は、フェスならではの雰囲気や空気感よりもラインナップの影響が大きいんじゃないでしょうか。サマソニで言えば、何年かぶりに来日とか初来日する外タレ目当ての人が毎年一定数いるじゃないですか。あとは日にちによってある程度のジャンル分けをすることで1日だけのお出かけにしようとしているのかも。さらに、あまりフェスに行かないようなライト層であれば、都内から1時間かからない距離なら言葉通りお出かけ感覚で行けますし」

 

 

2010年以降の“ベンチャーフェス”

小山「2010年以降、フェスブームっていう言葉が出てきたのと同時に都市で行われるフェスが増えてきました。それまでは「都市型フェス」というとサマソニだけのイメージでしたが、2010年以降はBAYCAMP(以下、ベイキャン)、JAPAN JAM(以下、ジャパンジャム)、VIVA LA ROCK(以下、ビバラ)など発展途上の新たな都市型フェス、言い換えると「ベンチャーフェス」が増えました。そこからまたフェスの在り方も変わってきてて。そのベンチャーフェスのなかだと、話題に上るのは今言った3つだと感じるのですが、これらが目立っている理由ってなんだと思いますか?」

 

小澤「ビバラは、3日間(2016年は2日間)5ステージという大規模での開催にもかかわらず、主催者の顔と意思が伝わってくるフェスですね。音楽に関連するワークショップのオトミセや、出演者のトークショーなど、音楽を様々な角度から楽しめるイベントになっている。ライヴについても、アリーナの左右には前方でも落ち着いて鑑賞できる『うっとり♥ エリア』が用意してあるなど、観客のニーズに合わせて多様な楽しみ方ができる仕組みがありますし。日ごとにある程度ジャンル分けされているのも嬉しいですよね。今年で言うなら、1日目はテレビにも出るようなポップなバンドが多め、2日目は僕が好きなラウドやパンク寄りが中心、というように。1日行くだけでも満足感があり、逆に2日間通しで行くと、新しい音楽と出会えるかもしれない。大きなフェスになればなるほど、様々なアーティストが入り混じってジャンル分けが難しくなると思うんですよ。その点についてはビバラは、好きなジャンルが集中している日には思いっきり前でライヴを楽しんで、違う日には新しい音楽との思いがけない出会いを意図的に楽しめる。加えて、会場である埼玉出身のバンドをピックアップしたり、会場周辺をフェスの空気感で埋め尽くしたり、地元と一緒に作り上げてるっていう感じもすごい伝わってくる。都市型の中でもある意味、地方フェス的な側面も持ってますよね。メガフェスでもあり、地方フェスでもあり、主催者側の意図やブッキングの意図が伝わる、ある意味アーティスト主催フェスの一面も持っているビバラは、いままでなかった価値観をもったベンチャーフェスの在り方を示してくれてますよね」

 

古川「ジャパンジャムでいうと、規模も動員も国内最大級の音楽フェス・ロッキンと同じロッキング・オン社の企画制作という事で、ラインナップや過ごしやすさなどそもそもの期待度が高い気がします。ジャパンジャムならではの、アーティスト同士のコラボがあることが、このフェスならではのスペシャル感かなと」

 

小山「私は今年は5月5日(木)の最終日のみ行ったのですが、BLUE ENCOUNT金井政人BIGMAMA)のコラボステージが熱かったですね。結構前の方で観ていたのですが、ライヴハウスでやってるのか、というくらい熱気がすごかった!去年と今年は幕張の海岸沿いで開催されて(2017年から蘇我に変更)、海沿いならではの開放感も感じられたし、砂浜でいち早く夏の空気まで感じることが出来ました。5月なのに真っ黒に日焼けして、夏フェスのような開放感をいち早く味わえるという点も、他のフェスにない強みです」

 

古川「ある意味、日本で一番早い太陽を感じるフェスという位置付けも、春フェスの定番を狙っているという点でも、ロッキング・オンがフェスの季節感を握っているんじゃないかなと。夏にはロッキン、冬にはCOUNTDOWN JAPANもありますし」

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「川崎で行われているベイキャンはどうですか?」

 

古川「海と工業地帯に囲まれた陸の孤島みたいな会場で開催する野外オールナイトフェスです。コンパクトなスペースにステージ3つ、飲食店も10店舗ほどで、メインの2つのステージでずっと交互に音楽が鳴っているという状況が続きます。『ドキドキとロックのみを発信する』と謳っている通り、ストイックにライヴを観ることと、野外オールナイトでひたすら音楽に浸かる環境を楽しむっていうシンプルなフェスです。私は今年初めて参加したんですが、都市型フェスの中では比較的人が少ない印象でした。毎年そうなんですかね?」

 

小山「私は毎年行っていますが、今年は例年と比べてお客さんの数が少なかったですね。開催時期が9月なので、フェス気分が終わってしまっているんだと思います。8月までのフェスで一通り見たいアーティストを観てしまっていたり、お金を使い果たしていたりだとか。去年までのラインナップと比べると、今年は正直豪華さに欠けた感はあるかな」

 

古川「特に、今年初の試みだった前夜祭(「BAYCAMP2016 TGIF」)は、『伝説級に人がいない』とネットで話題になってましたけど、平日開催かつファンの年齢層が高めなラインナップだったのと、タイムテーブルの発表が2週間前とかなり遅めだったのもあり、オールナイトっていう部分がネックになったのかも。ただ、興行的には失敗だったと言われている一方で、観客の満足度は高かったように感じます。夏の大きなフェスでは味わえないくらいの近さでライヴを観れたり、立地の特殊さや一晩中音楽漬けな環境も相まって、他の都市型フェスにはないスペシャル感を味わえましたから」

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4大フェスを超えるフェスが都市型から生まれるのか?

小山「これまで話してきたように、2010年以降に生まれた都市型のフェスの中でも、他にはない特徴や個性のあるフェスが出てきていると思うんですが、やっぱり今のフェス界では「4大フェス」(フジ、ロッキン、サマソニ、RISING SUN ROCK FESTIVAL(以下、ライジング))のイメージが大きいじゃないですか。その中で都市型のサマソニは、邦楽・洋楽ともに大衆的で幅広いラインナップで間口を広げている、フェスの入り口であり王道的存在ですよね。音楽を多面的に楽しめるビバラや、ライヴのみに特化した野外オールナイト型のベイキャンなど、サマソニよりセグメント化された都市型フェスがたくさん出てきているっていう状況の中で、やっぱりサマソニがいちばん目立っていて。日本に洋楽のフェスが少ないから、サマソニには洋楽のアーティストが出てるっていうだけで集客力はあるし、東京と大阪の東西の二大都市で開催しているという優位性は前提としてあるわけですが。現在たくさん出てきている都市型フェスの中で、今後サマソニに匹敵するようなフェスってあるんでしょうか」

 

小澤「まず、4大フェスと肩を並べるには、フェスの楽しみ方の多様性が必要だと思います。サマソニって、1日中ステージにいても楽しいし、カジノとかVR体験、アパレルブランドのブースなど、総合的なエンターテイメント施設のような要素があるじゃないですか。ビバラは『VIVA LA GARDEN』っていうアリーナの外の無料ブースで家族がBBQしたりフットサルしたり、中ではオトミセを回ったりっていう楽しみ方ができますよね。そういう特殊な要素はすでにあるので、ステージの増設が進めば、かなり4大フェスに近付くのではないでしょうか。あとは、フェスのドラマと歴史が付いてくればいつの間にか5大フェスになっていたり……。とにかく今の日本では音楽だけでなく、フェスの遊び方の多様性っていうのが求められてると思います。でも都市型でそれを再現できる場所が限られているんですよね」

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小山「そうですね。仲間とみんなでワイワイできるような『体験・共有型』っていうキーワードはのは結構ここ最近の遊びのトレンドなのかなって思っていて。フェスでも音楽はもちろん、音楽以外のことでも楽しい思い出が作れることが、フェスの強みになっていくのかなって思います。その視点で見たときに、わざわざ遠出してフジロックとかライジングなどに行かずとも、首都圏内でみんなで楽しめる体験ができるのが都市型の強みなのかなって」

 

古川「行きやすさが大きいですよね。日帰りで行けちゃうから長期休みじゃなくても、普通の休日に行けますし」

 

「ベイキャンでいうと、満足度が強みっていう話してましたよね」

 

小山「そうそう。今年は人が少なかったから満足度が高かったのかもしれないけど……。ベイキャンの会場は『これ帰れるのかな?』くらいの陸の孤島で、都市型にも拘らず自然型のような非日常感も味わえたりすることも魅力ですよね。ラインナップの豪華さやフェスの快適さは例年改善しているので。あの陸の孤島にサッと行けて帰れるみたいな仕組みがあったら、欲しいですね。レジャー感ありつつアクセスの仕方増えたりすれば、あの場所自体は面白いから……たとえば、船でいけちゃうとか(笑)」

 

「その話聞いてると、ベイキャンはフェスの固定ファンがつきそうな感じがします。都市型フェスに固定ファンがついたら強いですよね。毎年行きたいって思えるフェスが都市にあるなら。自然型フェスには、毎年必ずそのフェスに行くっていう固定ファンは少なくないですよね。1月に初詣、8月にはフジみたいに、年間の行事にフェスが食い込まれているっていう。その固定ファンでも、どうしても都合がつかなくて、遠出はできないこともあると思って。もし、日帰りで行ける都市型フェスに固定ファンがついたら、ブッキングで動員が変わるようなフェスでも気軽に行き続けられるんじゃないかなって思いました。だから、それによって必然的に固定ファンがつくフェスが安定感を保ちながら大きくなると思います。例えばベイキャンだったら、横浜や川崎、湘南の最先端のシーンだったり、確実に新しい音楽と出会えるようなコアなステージが増えるとか」

 

 

可能性があるのが都市型フェス

小山「もちろんラインナップをニーズに合わせたり、レアなブッキングをするっていうのも大切なんですが、今は音楽を聴くだけじゃない遊び方が必要ですよね。例えば、友達とみんなで楽しめるとか、超美味しいフードが多い、サマソニのようにブースの体験が充実している、っていう音楽以外の部分がフェス自体の魅力になりつつあります。その点でいうと、2010年以降の都市型ベンチャーフェスは、それぞれに新しい強みがある。その強みを今後も磨いていけば、もしかしたら4大フェスの入れ替わりがおこるかもしれない」


古川「4大フェスと呼ばれている、長い歴史の中で積み上げてきたノウハウと安定した人気があるフェスに、新しい都市型が名を連ねて5大フェス、6大フェスになったり、小山さんの言った通り4大フェスの変動が起こる可能性は高いですね。一番有力なのはやっぱりビバラかと。規模も大きいし、オトミセや『うっとり♥ ゾーン』など、音楽の多様な楽しみ方を提示して、かつ観客の目線に立って考えられた画期的なチャレンジがたくさんあるので。」

小山「4大フェスだけに関わらず、2~3万人の動員がある夏フェスで都市開催がサマソニだけしか入っていないのも、夏休みの旅行として地方に行く人が多いからですよね。逆に5月のGWを利用した日帰り的フェスは都市型が有利なんじゃないかなと。そうやって都市部は、春も大きいフェスが楽しめるので春フェスっていう言葉が定着すれば『春の4大フェス』と呼ばれるようになり、ほぼすべてが都市型、というのもありそうですよね。春から秋まで楽しめるから、夏フェスというくくりにしては惜しいスタイルですよね。もはや通年で楽しめる」


古川「1年を通して考えると、今は2〜3月ってフェスが少ないですよね。でも卒業シーズンで、受験の間フェスに行くのを我慢していた中3・高3の学生にはフェスの需要が高い時期なんじゃないかと思うんです。3月に行われた『SCHOOL OF LOCK!』と『進研ゼミ』主催の卒業のお祝いのためのライヴ『ホイッスルソング』に行ったとき、そのニーズや爆発的なエネルギーを感じました。このライヴは出演者が3組なんですが、もっと出演者を増やしたり、グループ学割とかインスタ投稿割引などを導入したりして、若い子にターゲットを絞り切った大規模な卒業フェスが生まれてもいいんじゃないでしょうか。このように、ニーズを見つけて隙間産業的に新たな試みをしやすい環境にあるのが都市型フェスだと思います」


小山「それ、ありですね。電車で時間をかけずにパッと行けて、お出かけ感を最大限に活かせるのが都市型ですもんね。最初に話したように、構造的には比較的若い人達向けなのかもしれませんし。こんな風に、夏フェスだけに限らず、色々な可能性があるのが今の都市型フェスなのかもしれません。今後、今の都市型フェスがどのように変化をしていくのか、注目すべきポイントですね。さらには、いままで全くなかった形式とか常識に囚われないフェスが誕生するもの都市型かもしれませんね」

 

 

「MUSIUM、フェスを語る。『フェスってこの先どうなる?』〜自然型編〜」

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