お坊さんに聞いてみた。寺社フェス「向源」〜伝えたいビートと声明〜

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たまたま観たあるテレビ番組で特集されていたのは、「向源」という寺社フェス。そこでは写経や座禅、生花や書道といった、仏教や日本文化に触れられる様々なワークショップや、増上寺のプロジェクションマッピング、お坊さんも怖がるお化け屋敷、さらに声明(しょうみょう・仏教の儀式や法要で僧侶が唱える声楽)の公演やミュージシャンを招いてのライヴ、お坊さんによるDJまで行われているという。
近年、各所で様々なフェスが催されているが、仏教×音楽なんて見たことがない、いったいどんなイベントなのだろうと興味が沸き、ぜひMUSIUMでも紹介したいと思ったのだ。
今回、GWの4月29日〜5月5日に開催される「向源」を前に、主催者である友光雅臣さん(現、天台宗常行三昧寺副住職)にお話を聞かせていただくことができた。 笑顔が印象的な友光さん。「向源」、そして音楽についての愛情が伝わってくる取材となりました。

取材・文/及川 季節 畠山 拓也

撮影/畠山 拓也

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伝えたいビートと声明
〜すごいキラキラしたものを感じたんです〜

ーー「向源」という寺社フェスが行なわれているということを知って、しかもお坊さんのDJや声明やミュージシャンのライヴが行われていたり、仏教と音楽の融合というところにすごく興味を持って、ぜひお話を聞かせていただきたいと思いました。今日はお忙しい中、ありがとうございます。

友光雅臣(以下、友光)「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

ーーまず、お坊さんもDJをしていいんだという驚きがあったのですが、その選曲もビートが効いたものだったり、高尾山で厄払いをしてもらったことがあったのですが、その声明がすごくカッコよくて、フジロックで聴きたいなと思ったんです。

友光「嬉しいです。そうですね、DJはチルアウトといった感じでもなく、普通にDJしてますね」

 

ーーリスナーとしてはどんな音楽を聴いてるんですか?

友光「何聴くかなー本当に4つ打ちしか聴かないんですよね」

 

ーーそうなんですね、お坊さんのイメージが打ち砕かれていきます!笑 4つ打ちクラブミュージックにはいつ頃出会ったんですか?

友光「小学生の頃ですね。電気グルーヴに衝撃を受けて、彼らのラジオを聴くうちにのめりこんじゃって」

 

ーーすごい早熟!自分を構成する9枚を選ぶとするなら?

友光「悩むなー!全人生の中の9枚ってつらいっすよね!激烈に悩むなー!」 (最後に友光さんの自分を構成する9枚を紹介しています。ぜひご覧ください)

 

ーーそれでは、4つ打ちを愛する友光さんにとって、ビートとはなんですか?

友光「うーんビートかー。天台宗の修行で山に入っている時に、携帯やPCやiPodとかは全て没収なので、2ヶ月間音楽が無い状態だったんですね。その音楽を聴いてない時に声明を聴いて、僕もやっぱりこれをフェスの山の中で聴いたら気持ちいいだろうなーと思ったし、すごいキラキラしたものを感じたんです」

 

ーーそれはどういったものなんでしょうか?

友光「たまたま彼女がお寺の娘で、僕は一般家庭からの出なので、修行に入ってそこで初めてお坊さんもこんな音楽やるんだって知って、すごく良いなーと思って。すごく面白いな楽しいなと思ったし、これを若いみんなに聴いてもらいたい、喜んでもらえるはずだと。そういう意味じゃ、うーんやっぱりもともとDJをやっていて、音楽の展開とか、こういうふうに聴くとみんな喜ぶとか感じていて、せっかくこういうのもあるんだからすごくみんなに伝えたいなって。

これが声明の楽譜のようなものなんですが、これでは分かりにくいと思うので、これが五線譜風にこうぐにゃぐにゃ~と書き直したものです。これは何調で、それに西洋音階、ドレミに当てはめるとこの音だよ、ヘルツに当てはめるとこのヘルツだよーって」

 

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声明の楽譜。漢字の横にあるカタカナや記号で音やメロディを読んでいく。

 

 

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五線譜のように書き直したもの。左側にある、宮・商・角・微・羽が音階を表している。

 

ーーこれはこのお寺で唱えられているものなんですか?

友光「このお経は特殊で、普通のお坊さんだと一生で1度しか聴かないんですね。お坊さんでない人は、ほとんど耳にしないお経なんです。なんでかというと、阿闍梨(あじゃり)っていう言葉知ってます?」

 

ーー阿闍梨餅の、ですか?

友光「それです。修行をしてお弟子さんをとれるようになると阿闍梨って呼べるんです。僕も2ヶ月間の修行の後も色々勉強をして、試験や儀式があったりして、これが全部終わって阿闍梨になれましたおめでとうーっていう時に、お堂の外でこの歌が歌われるんです。お経って基本的に、悲しいこととか供養であったりとか基本的に暗いんですが、これに関しては、良いことを慶ぶという歌なので、僕が触れてきた声明の中で1番明るい歌なんですよ。初めて聴いた時に、いつもとは何か違う。明るくてアッパーだなって感じて」

 

ーーアッパー!笑

友光「インドで使われているサンスクリット語で書かれているんですが、内容としては、ずっと修行してきて阿闍梨になれてよかったねーみたいな、お祝いの歌で。阿闍梨になった時以外にも良いことがあったら唱えることもあるんですが、良いことがあったからお寺にお経を頼みに行くっていうことがないもので、なかなかやる機会もなく。でもこの喜びの歌をぜひやりたいと思って、向源2年目にやったんです。 歌ってみましょうか?」

 

ーーいいんですか?!

友光「ええ、いいですよ!」

(“吉慶梵語賛”(きっきょうぼんごさん)披露)

 

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ーー(拍手!)まさか目の前で聴くことができるとは思っていませんでした!声が真っ直ぐ響いてきますね。たしかに抑揚がついていて、なんだか明るい、長調の感じがしました。

友光「僕は超へたくそな方なんですけど、師匠方は超うまくて。あんまりハッピー感とかアゲ感は伝わらなかったですかね。普通のお経は割と低音でずーっと進んでいったりとかビートがない中で、これは律曲切声壱越調(りっきょくきりこえいちこつちょう)とありまして、これは何調でどのテンポで唱えるよーっていうもので、今の曲はすごくテンポが早いんですね。これぐらいの文字数を40分かけて唱えるものもあるんです」

 

ーーBPMが早いんですね。

友光「そうそうBPMが。笑 アップテンポで割と高い音を使う、すごく明るいなと思って。僕はバンドマンをやっていたわけではないし、ピアノとかもやってないし、音楽理論も全然わからなくって、声楽もカラオケに行くくらいでしたが訓練で今ぐらいまではなんとか。いろんな人がいろんな風に感じてくれるし。NYやワシントンに行って公演させてもらったり、やってて面白いし、よかったなって思います」

 

ーー声明やお経に、同じリズムでビートを刻むテクノなどのビートミュージックとのつながりを感じたのですが、唱えていてトランス状態になったりすることはあるんですか?

友光「うーんなんだろうな。お坊さんの戒律の中にも、音楽で熱狂してはいけませんっていうのがあるんですよ。音楽にどうしても力があるので、我を失って楽しんでしまってはいけないよっていう。
難しいところで、トランス状態って我を忘れていることかもしれないんですけど、すごく音楽に集中している瞬間かもしれないんです。他のことが全部なくなって音楽と一体になってる瞬間っていう。そういう意味では、声明ではなくて念珠っていう、数珠を持ちながら不動明王の名前を1,000回、2,000回ずっとループして唱えることがあるんですが、これは油断すると途中で噛んじゃったりするので、結構集中しないとダメで。トランス状態っていうか、すごくすっきりするんです。これだけをやるっていう、本当に集中していくので、それは以外とあるのかなー。気持ちいいからとかではなくて」

 

ーー冴えていく感じですかね。

友光「自分の周りのいろいろな、あのメール返さなきゃとか、あの仕事どこまでいってたっけ、とかから解放されるので、今は真言を唱えることに集中する、その時にお不動様のことをイメージしてやらないと何千回も続かない。それが終わると、空っぽになっているので、新しいことを考えられたりとか。あのメールとかは忘れちゃうんですけど。笑
お堂に入る時はあそこに鳥がいるとか、花が咲いてるとか気がつかなかったのに、終わって出ると周りが見えるようになってたり、今まで見えなかったもの感じなかったものを感じられたり」

 

「お坊さんに聞いてみた。」後編は、こちらです。
ぜひ御覧ください!