MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜大物アーティスト復活編〜

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音楽とともに過ごした2016年もそろそろ終わり。皆さんが感じた2016年の音楽シーンはどのようなものだったでしょうか?

MUSIUM編集部では「話題となった大物アーティストの復活」、「勢いがあったインディーズレーベル」、「ストリーミングサービス本格スタート」「今年流行した音楽のアプローチ方法」という4つの視点で、今年の音楽シーン、さらにこれからどうなっていくのかを語り合いました。

1年を振り返りながら、音楽ファンであるからこそ見えたシーンの変化と進化を、一緒に考えてみませんか?

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜勢いがあったインディーズレーベル編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜ストリーミングサービス本格スタート編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜2016年流行のアプローチ編〜

 

 

2016年に復活した大物アーティスト

及川「2016年は、いろんな大物アーティストが復活して話題になりましたね」

 

小澤THE YELLOW MONKEY(以下、イエモン)、Hi-STANDARD(以下、ハイスタ)、小沢健二(以下、オザケン)、175Rとか」

 

山吹オザケンは、『小沢健二 魔法的 あす1月20日午後3時 渋谷クアトロ』っていう謎のチラシが突然街に貼られて、業界関係者がクアトロに殺到したんですよね」

 

及川「ゲリラ的に復活したんですね。曲は出したりしてるんですか?」

 

山吹「ライヴでは披露したみたいですが、音源としては出してないし、出す予定もないんじゃないかと。でもそのクアトロゲリラライヴのあと、ツアーはしてました。今回復活した経緯を考えてみたんですけどオザケンって、渋谷系の代表のような人じゃないですか。今の渋谷の音楽とかって、似てるような部分もあったのかなと思って、今なら復活できるし話題になるかもって思ったのかな。もちろん名前は知られてるし、音楽的な面でも今の世代の若い人にも聴かれるんじゃないかっていう意図があって復活したのかなって思ったんですけど……でも音源出すとかではないんですよね。たぶん、当時のファンはすごい喜んだと思います。実際、オザケン世代で昔からファンだった知り合いに連絡してみたら、すっごい喜んでました。でも、CMでも“ラブリー”のカバーが流れたり、今でも受け入れられる感じはあるんですけどね」

 

小澤175Rは、SKULLSHITっていう洋服ブランドをやっている彼らの友達が、SKULLSHIT20周年を175Rにお祝いしてほしいということで、『SKULLSHIT 20th ANNIVERSARY “骸骨祭り”』っていう、幕張メッセで行われたイベントで復活しました」

 

及川175Rで復活するのは、6年ぶりなんですね。これを機に、レコーディングもしてるみたいですね」

 

山吹「でも写真を見たら今も若かった。変わってないですね」

 

小澤「たぶん、復活したいってずっと思ってたけどタイミングもなく、でも復活ブームだったり、ちょうど声がかかったっていうのもあって復活したのかなと思いました。ハイスタとかイエモンも、ちょっと昔のバンドの復活ラッシュだからこの際って感じなんですかね」

 

山吹「復活するのって、タイミングや良い機会を狙ってるのかもしれないですね。何もないで復活しましたっていうよりは、結成何年とか、今回のお祝い事などと合わせて復活した方が、何もないよりは話題になりますしね」

 

人間的復活 〜宇多田ヒカル〜

2016年の宇多田ヒカル

 及川「その中でも1番話題になったのは、やっぱり宇多田ヒカルですかね」

 

山吹「そうですね。でも元々、復活の予兆はあったんです。2009年に人間活動をするために活動休止したあと、結婚。2015年にブログで『出産して、レコーディングもしてた』って書いていて、親になった心境もTwitterでつぶやいていたので、そろそろ動き出すんじゃないかと世間でも言われていましたね。ちなみに、人間活動前に日本で出した最後のアルバムは、2008年の『HEART STATION』です」

 

及川「改めて感じますけど、彼女の1stアルバム『First Love』が初動で200万枚、累計で約1000万枚売れてるって、今のCDの売り上げとは比べようがないですが、やっぱりすごい売れたんですね」

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1999年リリース 1stアルバム『First Love』

 

小澤「日本で1番売れたアルバムですね」

 

及川「当時は『現象型』って言われたそうです。それまで巷では、小室ファミリーの音楽が1番の売れ線だったのに、15歳の女の子がいきなり出てきて売れたのもあるし」

 

山吹宇多田ヒカルは、根っからの音楽一家だったんですよね。アメリカ生活をする中で触れたカルチャーや音楽、母からはブルース、父からはプロデューサーとしての音楽の作り方など、それらを吸収したのが宇多田ヒカルの音楽だったんじゃないかなと思います。つまり、R&Bだけど歌謡曲っぽくもあって、しかも歌声は、1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)っていう、癒されるゆらぎの声の持ち主。そんな音楽って日本ではそれまでなかったし、しかも15歳の女の子が始めたことで『現象』って言われたみたいですね」

 

小澤「その現象って、どういう影響があったんですかね?」

 

及川宇多田ヒカルの音楽が、今までの音楽業界の流れを変えたという感じ。小室哲哉も『宇多田ヒカルが出てきたことで、全部変わった』みたいに言ってました。宇多田ヒカルが出てきてからは、宇多田側に寄っていく音楽にしていかなきゃいけなかったんだろうけど、小室哲哉に求められるのは小室の音楽でっていう葛藤があったらしいです。あと、宇多田ヒカルが今年発売したアルバム『Fantôme』は、声が苦しくなく歌えてるって自分でも言っていました」

 

山吹「歌い方を変えたんですかね?」

 

及川「そういう感じでもなさそうでしたね。自然とそうなったみたいです」

 

小澤「『Fantôme』に収録されている曲って、今までの曲と比べてキーは下がりました?」

 

山吹「昔はキーが高い印象がありましたね。私はカラオケで“First love”とかをよく歌っていたけど、大サビなんてすごい高い。でも、『Fantôme』の曲は若干キーが低くなっていると思います。特に印象的だったのは、『とと姉ちゃん』(NHK)のオープニングで初めて“花束を君に”を聴いた時。今までも柔らかい歌声だなとは思っていたんですけど、さらに優しさや柔らかさが増したように感じて、思わず泣いてました。キーが低めになると、必然的に歌声が柔らかくなるとは思うんですけど、加えて安直な考えだけど、お母さんになったからこんなに優しい声で歌えるんだなって思いました。同時に、亡くなったお母さんに向けた歌なんだなと、素直に思いましたね」

 

宇多田ヒカル「花束を君に」360度メイキング

 

 

 

プロデューサー・宇多田ヒカル

 山吹「私は、宇多田ヒカルって『ライヴで魅せる人』というより、『音源の人』っていうイメージがあります」

 

小澤「どうしてですか?」

 

山吹「1曲に物語があって、それをひとりで聴いて頭の中で想像できちゃうからですかね。それに、スタジオで音楽をかちゃかちゃ作ってるイメージ」

 

小澤「たしかに音源の人っていうイメージはあるかもしれないですね」

 

山吹「音楽番組に出演しているのを観ると、佇まいだけで惹きつけられるし、演出もいらない気がするというか」

 

及川「昔のライヴでは、派手な衣装を着てコーラス隊と一緒にライヴしてましたね」

 

山吹「私も観たことがあります。でも、佇まいでも惹きつけられるけど、きらびやかな演出もしていて。編曲家としての才能はもちろんだけど、プロデューサー気質もあると思います。もし今、宇多田ヒカルのライヴで、自分自身で世界観を表現したら物凄いライヴになりそう。昔はできなかった映像技術もあるし、自分では作れなかったとしてても、ライヴで流す映像も宇多田ヒカル自身が監修したら」

 

及川「プロデューサーとか、編曲家としての宇多田ヒカルですね」

 

山吹「今回のアルバムで、若手の人とコラボしたのも、その人達を知ってもらう目的もあったのかもしれないですよね。でもそういう意味では、ライヴ重視の時代に、CD特典もないアルバムを発売するのって珍しいけど、私の好きにやっていくという感じなのかな」

 

及川「このCDがどれくらい売れるのかを試している、とも言われていますよね。ライヴの時代って言われてて、ライヴに専念できなければどうなるんだって感じだけど、宇多田ヒカルの場合はなんとかなるって考えたんですかね」

 

山吹「なるほど。曲自体に重きを置いて、復帰後にアルバムがどれくらい売れるのかを試したっていうのはわかる気がします」

 

 

女性シンガーに付いて回る「母親」

 山吹「プロデュースを元々やりたいっていうのがあって、今後もいろんなアーティストを発掘していきそうな気はします。日本人だけど、海外にも住んでるから外国人気質もありますしね。マドンナがプロデュースしていく人がどんどん売れていくように、そういう人になりたいと思っている感じはします。そういえば、日本人の女性プロデューサーって、あまり聞かない気がします。男性プロデューサーは、秋元康とかつんく♂ってすぐ思いつくけど、日本の男性になると、プロデュース対象はアイドルに向きがちかもしれないですね。もちろんアイドルプロデュースじゃない人もたくさんいますけど」

 

及川「確かにすぐには思いつかないですね」

 

山吹「そもそも、男性と女性で考え方や視点の得意・不得意があるように、音楽プロデューサーに求められるものって男性の方があるんですかね。そういえば、宇多田ヒカルが人間活動を開始したのって2009年からですけど、AKB48がお茶の間にも認知されたり流行りだしたのって、ちょうどその頃ですよね。AKB48のシングル1位は、今となっては当たり前ですけど、オリコン週間チャートで初めて1位を取ったのが、2009年発売の“RIVER”です」

 

及川「小室ファミリーの時代から、宇多田ヒカル、そしてAKB48って、特徴的な移り変わりですね」

 

山吹「あ、女性のプロデューサーっていうと、椎名林檎は違いますかね?」

 

小澤「椎名林檎は自身の楽曲を提供をする、作曲家という感じですかね。考えてみたら椎名林檎って、MVに新進気鋭の女の子を起用したり、AyaBambiをバックダンサーにしたりと、これから人気になるだろう若手を発掘する才能がありますよね。それに、オリンピックの音楽監修も担当しましたし、ここ数年、紅白歌合戦にも出ていたり、ワールドカップの応援歌“NIPPON”も作ったり」

 

山吹「女性が若いアーティストとコラボしたり、楽曲提供するのは、女性ならではなんじゃないかとも思います。母性というか」

 

及川「女性の本能的なものが働くんですかね」

 

山吹「でも、休養して結婚、出産まで経験したっていう物語性や、それまでの音楽的な評価もありますが、宇多田ヒカルみたいに、劇的な復活を遂げた女性アーティストは他にいないですよね」

 

小澤「宇多田ヒカルの今後の活動としては、やっぱりプロデューサーですかね。自分の曲も作りつつ、若手も輩出していくとか」

 

及川「確かに、さらにプロデューサーとしても活躍していきそうな気がします。大御所の人が若手を発掘していったら、また新たな人が生まれるかもしれないし」

 

山吹「デビュー当時『宇多田ヒカル現象』なるものが起きて、話す雰囲気が大人っぽいというか、ずっと冷めてる雰囲気があるなとは感じていました。だから、もしプロデュースするとした場合でも、自分の影響力とかも、全部俯瞰して見ているような気がしています。でも『Fantôme』は、人間活動の中で唯一無二の存在である母の死や、結婚&出産など、『人間』として生きていると遭遇するあらゆることを踏まえて、宇多田ヒカルの内なるものが出てきて完成した感じはありますね」

 

 

超インディーズ復活型 ~Hi-STANDARD〜

ゲリラ復活の衝撃

 及川ハイスタの復活もすごい話題になりましたよね。何よりも、事前情報を一切出さずいきなりCDショップに並ぶという、その復活の仕方に驚かされました」

 

山吹「小澤君もCD(『Another Starting Line』)買いに行ったんですよね?」

 

小澤「はい、当日ではないんですけど買いに行きました。一切告知無しのゲリラリリースだったんですけど、自分がその情報を初めて知ったのが、鹿野淳さんの写真を載せたツイートで。それを見て『これはヤバイことが起きた』と思いました。それからはしばらくTwitterがハイスタで盛り上がってました」

 

及川「私もTwitterで見ました。ファンだけじゃなく、沢山のバンドマンもリスナーとして喜んでましたね」

 

小澤「自分はタワレコで買ったんですけど、買ったのはフラゲ日じゃなくて発売日なんですよ。それでもレジに列ができていて、みんなも同じCD持ってましたね。しかも、発売日が一緒だった星野源SEKAI NO OWARIにも、週間売り上げで勝ったんです。やっぱりCDが売れる時代で成功したアーティストは、今でも一定数のCD売れるし、『CDで聴きたい層』という強い味方がいると思いましたね。それに加えハイスタの曲は、CDでしか聴けなかったので、盛り上がりに拍車をかけたのかもしれません。そういう意味で言うと、宇多田ヒカルも同じことが言える気がしました」

 

山吹「実際に今回の音源を聴いてみてどうでした?」

 

小澤「自分が言うのもおかしいんですけど、大人になったなぁって感じました」

 

及川「あー! 私もすごく思いました」

 

小澤「休止以前の音源は凄いパワーがみなぎっていて、勢いが彼らの良いところだったんですけど、今作は音の厚さにびっくりしました。3人の音の絡み合いやコーラスが凄く綺麗なんですよ。でも、やってることや言っていること、要するにバンドの本質は変わっていない。なんというか、40歳を超え、様々なキャリアを経た彼らが、ハイスタの青春感だったり爽快感を再解釈したという感じ。間違いなく彼らが生み出したパンクをやっているのに、サウンドだったりメロディはすごく繊細。しかも1度はバラバラになったけれど、そのことを感じさせない。ハイスタの活動の延長線上にある凄い作品だと思います」

 

及川「たしかに、ハイスタを聴いてる人にとってはすごく自然な再開って感じですよね」

 

Hi-STANDARD- ANOTHER STARTING LINE- Full ver.(OFFICIAL VIDEO)

 

 

音楽の知り方、聴き方

及川ハイスタって私にとって超青春なんですよ、高校の時の。みんなで描いた体育祭の看板が、アルバム『MAKING THE ROAD』のジャケットでした。でも、今大学生の小澤君は全然世代じゃないですよね? なんで好きになったんですか?」

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1999年リリース 4thアルバム『MAKING THE ROAD』

 

小澤ハイスタの影響をもろに受けたバンドが好きだから、自然と聴くようになったんだと思います。というのも、フェスで10-FEETがたまに“STAY GOLD”をライヴで演奏していたことで知りました。入りはそんな感じで、パンクやメロコアっていうジャンルが好きになってからBRAHMANなども聴きだして、AIRJAM世代と呼ばれるバンドの音楽を聴くようになりましたね」

 

山吹「ということは、昔から音源を聴いてたって訳ではないんですね?」

 

小澤「そうです。ちゃんと聴き始めたのは大学生になって10-FEETとかを聴きだした後なので。高校の頃は全然知りませんでした。名前だけは知ってたんですけど、『とりあえず凄いバンドいたんでしょ?』みたいな。でもこんなカッコイイ復活の仕方をしても、若い世代には全然浸透してない気がします。自分も若い世代の一員なんですけど」

 

山吹「そういえば、私の知り合いがWANIMAとか小澤君が好きな系統の音楽が好きで、たまたま家に来ていた時に『そういえばハイスタ新しいの出したよね?』って聞いたんです。そしたら『あーらしいですね。でもあんま聴いたことないっす』みたいな感じで返されて、もったいないなぁって思ったんです。それで、次に来た時に音源流してみたんだけど無反応で、ちょっとイラっとした(笑) ちょっとだけ体揺らしてたけど、何の曲ですかとかは聴いてこなかった。すごいもったいないって思って。でもWANIMAが超好きらしいんですよ」

 

小澤「やってる音楽は違いますけど、でもWANIMAを雇ってるのって、KEN YOKOYAMAなんですけどね(笑)でも、かなりの数、WANIMAだけの若いファンっていると思います。逆にKEN YOKOYAMAからWANIMAを聴くようになったって人も。AIRJAM世代の人って、そういうパターンが多いんじゃないんですかね。その人は自分と年近いんですか?」

 

山吹「そうですね」

 

小澤「でもむしろ自分がレアなだけだと思います(笑) 同世代の人は、ライヴありきの音楽って認識で楽しんでると思います。『別にライヴで観れないなら聴かなくてもよくね?』みたいな」

 

及川「なるほど。音楽の聴き方自体が変わってきてるのかな」

 

小澤「少なくとも、自分の周りではそういう風潮があります。ライヴで楽しむために曲を聴くみたいな。曲が好きだからライヴに行くんじゃなくて、ライヴで盛り上がりたいから曲を覚えるっていう感覚じゃないかなと。でも、そもそもライヴハウスで鳴ってる音楽っていうのは、ライヴありきの音楽という前提ではそういうものと言えるかもしれません。それでも、ハイスタに限らず好きなアーティストがリスペクトしたり、良いって言っている音楽は新しい発見になると思うので聴いてみてほしいですよね」

 

 

ハイスタが伝えた想い

及川「でももしかしたら、ゲリラ復活じゃなかったらこんな話題にはならなかったのかなとも思うんですよね。活動休止してからも、何度かライヴやってますよね?」

 

山吹「東日本大震災以降に開催してるAIRJAMで、何度か復活していましたね。東北でもやったりしてて、やっぱり被災者と被災地を元気付けるのと復興支援を兼ねた活動だと思います。そもそも東北ライブハウス大作戦を作ったのがハイスタだったりBRAHMANのPAをやってる人なんですよ。それでその人の呼びかけに応えたのと、ハイスタ自身も力になりたいって思ってたんでしょうけど。本当に彼らは、尽力という言葉通りに復興支援の活動しています。そういう活動があったからこそ、ゲリラ的に復活したっていうインパクトが強かったんだと思う」

 

小澤「そうですね。しかもゲリラ音源。これがゲリラライヴだったら『ハイスタ復活』ってそこまで騒がれなかったのかもしれないですね。音源を出すっていう行為が、完全復活宣言になったという。定期的に活動します、じゃなくて同じ時代に生きる1アーティストになったんです。しかもツアーもやるんですよ。それこそ、東北ライブハウス大作戦で建てられたライヴハウスも周ります。あと、若手の04 Limited Sazabysも対バン相手に選ばれたり。それで今年のAIRJAMにもONE OK ROCKとか、たぶんハイスタを聴いたことがない子がファンに多そうなバンドも呼んだり。かなり今の音楽を大事にしてますよね」

 

及川「若い世代に受けつがせるって感じなのかな?」

 

小澤「やっぱりロック、パンクが持ってる力とか、楽しみ方っていうのはずっと続いてほしいんじゃないでしょうか。でも、確実に『何かあったら動こう』っていう意思は若い世代に伝わっていってると思いますよ」

 

及川「なるほど。そういうことを恥ずかしがらずにできるのって、凄いし、カッコイイ。憧れる人の気持ちがわかる気がする」

 

山吹「もうこのゲリラリリースっていうのが、今後の活動のためのプロモーションになってきてる気もします。告知なしっていうのが逆に、プロモーションになってるという。やっぱり彼らならカッコイイことをしてくれるってことを再確認できたし、知らない人まで巻き込めてる。でもやっぱり、逆の発想を使うことによってCDの限界も見えてきましたね」

 

小澤「そうですね。もはやCD自体はアーティストの売り物ではなくて、プロモーションの種類の中に音源があるっていってもいいかもしれないですね。その現状への意思表示としても今回のゲリラリリースがあったと」

 

及川「でも今回、ここまでSNS中心の社会になったにも関わらず、情報が洩れずに発売できたのもすごいですよね」

 

小澤「そうですね。あと何より、ゲリラリリースっていうのは、もともとメディアに出なかった彼らがやるからこそ、様になるんですよ。メディアではなく、本当にクチコミとかで売れたバンドだから、ある意味クチコミそのもののSNSでCDを買わせたのは熱い。本人達は面白いことをしたかった、と言っていますがリスナー側からすると、結成してからスタンスを曲げずに、さらにクールなロックバンドになったっていう印象です」

 

及川「それでも、ゲリラリリースは誰も予想できなかったし、その結果も凄かったよね」

 

小澤「AIRJAMの開催は発表してたんですけど、でもそれは定期的な復活としか思ってませんでした。それでもありがたいんですけどね。でもCDが発売したことで、完全復活になりました」

 

山吹「なるほど。たしかさっきの東北ツアーってかなり小さいところでやりますよね。今後もそういった活動になると思う?」

 

小澤「やっぱりスタンスは変わらないと思います。アリーナツアーとかはせずにライヴハウスで。しかもハイスタで育ったような若い世代ともっと交流するんじゃないでしょうか。若い人達がハイスタを知るきっかけにもなるし、何よりハイスタを聴いてきたバンドは憧れの存在と対バンするために切磋琢磨していくだろうし、そういうロックバンドならではの夢を叶えてくれる」

 

山吹「でもそういうバンドマン達には絶対刺激になると思ってます。それを見ているこっち側にも刺激になる」

 

及川宇多田ヒカルも若い世代と組んだりしてるし、育てていこうっていう気持ちが大きいんでしょうか。しかもハイスタは精神性を、バンドだけじゃなくてお客さんにも引き継いで欲しいっていうのが伝わってくる」

 

 

超メジャー復活型 〜THE YELLOW MONKEY〜

イエモン復活劇

及川THE YELLOW MONKEY(以下、イエモン)は、ハイスタとは真逆な復活の仕方ですね。渋谷駅に謎の暗号が描かれた広告が貼られたり、サイトで謎のカウントダウンが始まったりとか。そこからファンがいろんな予想をして、ネットで一気に広まったみたいですね」

 

小澤「本当に真逆ですよね」

 

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復活前にサイトで公開されたカウントダウン

 

及川「さる年の今年っていうタイミングや、巨大広告を出したのが広告掲載費もかかる、スケジュールも前もって押さえておかなくちゃいけない渋谷のど真ん中だったり、その内容もファンにしかわからなかったり、ネットで拡散したくなるような考え抜かれた内容でしたね。いつこの復活劇を仕掛けてやろうかって、緻密に計画された大仕掛けな超メジャー型の復活だと思いました」

 

小澤「その戦略が見事にイエモンにハマったんですね」

 

 

解散、そして復活の理由

山吹「1度解散したのに、今、復活となった理由はなんだったんでしょうね?」

 

小澤「まず解散の理由としては、フジロックの初年度のステージに、Red Hot Chili PeppersとかRage Against The Machineとか、海外のすごいアーティストの中に、日本でもイエモンとかTHE HIGH LOWSとかが出たんです。オルタナティヴなメンツの中で、しかもイエモンが有名曲じゃなくて、洋楽フェスだからと攻めたセトリでやった結果、オーディエンスの反応が薄かったり、あんまり盛り上がらなかったらしいです。それで傷を負ったって。それが解散の理由だって言ってもおかしくないって本人達も言ってました」

 

及川「フジロックの影響ってそんなに大きかったんですね」

 

山吹「そして今年復活したのは、宇多田ヒカルは結婚して子供が生まれてっていうタイミングだったりしたのかもしれないけど、イエモンは特にそうだと思うんですよね。去年、吉井和哉(Vo&Gt)に子供ができて。今年、今まで1度も出なかった紅白に出るのも、結婚して親になったっていうのが大きいのかなって」

 

及川「丸くなったというか、子供にもこの姿を見せたいみたいな感じなんですかね。以前から復活の構想はあったけれど、復活するならさる年の、子供も生まれて落ち着いた今年だったのかもしれません」

 

 

THE YELLOW MONKEYと[Alexandros]

及川イエモンも私の中学校の頃の青春で、細長い8cmシングルCDを貸し借りしたりとか、友達はイエモンの下敷きとかファイルを大事に使ったりしていました。当時も、『雅でグラマラスでギラギラしたお兄さん達』っていうちょっと刺激的なイメージだったけど、今年復活して50歳近くになってからも、あのギラギラした色気はそのまま。むしろ、より増したんじゃないかって思わせるのがすごいなと思いましたね」

 

小澤「当時も女性人気が凄かったらしいですね。アイドルじゃないけど、黄色い声援があがるみたいな。だから、イエモンは今で言ったら[Alexandros](以下、ドロス)って、自分の中で位置付けてるんです。音楽も画期的ですごいことやってるんだけど、容姿の魅力もある、見た目にも人が付いてくるし、ドロスもそういう感じだなって思います」

 

及川「確かに、どちらも女子からの声援が飛びますね」

 

小澤「だけど本当に音楽と誠実に向き合ってるっていうところも、イエモンドロスの共通点かなって。イエモンの音楽性はギターのリフもののサウンドに、日本歌謡曲のような親しみやすさだったり哀愁が乗っかったっていうか。イエモンの豪華絢爛な見た目から当時は「ビジュアル系か?」ってくくられたりもしたみたいですが、ビジュアル系とは全然違う音楽だなって思うんです。今の人達が聴いたらどう思うんでしょう?」

 

及川「復活して一発目のシングル『砂の塔』はドラマ主題歌で、幅広い層が耳にしたと思うんですけど、歌謡曲的な馴染みやすさがありながら、今回はストリングスも入ってゴージャス感もあって。MVを観てもやっぱり彼らの持ち味である妖しさや艶やかさは健在。これで気になった人がYouTubeとかで昔の曲を聴いて、例えばポップさもある『LOVE LOVE SHOW』だったり、『JAM』や『球根』みたいな自身の葛藤を歌う曲だったり、さらにイエモンの幅広い魅力にハマっていく人は多いんじゃないかなって思います」

 

砂の塔 / THE YELLOW MONKEY

 

 

山吹「若い層のファンも増えてきているのかな」

 

及川「今回のツアーで、若い人向けのお手頃価格の席を用意してました。もしかしたら親の影響で親子でファンになった人もいるかもしれないし、新たな若いファン層に向けて発信もしてるのかなって。でも『いえもんといえば、お茶?バンド?』っていうアンケートで、20歳以下にはあんまり知られていないって、公式HPに載ってました(笑) でも、最後に出したシングル『プライマル。』の売上よりも、復活してからの『砂の塔』の方が売れたらしいです。CDが売れないと言われてる時代に、すごいですよね」

 

小澤「その最後に出したシングルは、ライヴでやったことはなかったらしくて、今回の復活1発目の曲が、その曲『プライマル。』でした。10何年ぶりのライヴで初めてみせたって」

 

山吹・及川「すごい!かっこいい!」

 

及川「さっき、97年のフジロックで散々な思いをしたっていう話が出てきたけれど、今年、海外からもたくさんのアーティストが出るSUMMER SONICの、1番大きなステージにイエモンが出演して大成功を収めたことが話題になりました。それは、90年代の当時よりもネットが普及して、リスナーも洋楽邦楽、メジャー・インディーズの垣根を超えて、色々な音楽に触れることができるようになったからなのかなと思いました。良い音楽はどんどん受け入れるっていう土壌ができたというか」

 

小澤「もともとお茶の間のバンドが復活して、しっかりまたそこに、さらにファン層を広げて帰ってきた。それはなかなかできない、すごいことですよね」

 

 

復活と復興

 山吹「来年以降、復活しそうなアーティストはいますか?」

 

小澤ELLEGARDEN(以下、エルレ)はいつか復活するって言ってますね。今、細美武士(Vo&Gt)がThe HIATUSMONOEYES、2つのバンドで活動しているじゃないですか。でも、ファンはやっぱりエルレがいいって言いますね」

 

及川「私のまわりにも、エルレ好きな人多いです」

 

小澤「今、社会人3年目くらいがバリバリの世代じゃないですかね」

 

及川「ネットで調べてみたらあるサイトで、復活してほしいアーティスト1位がエルレでしたね。あとはJUDY AND MARYチェッカーズBOØWYとか」

 

山吹「以前の復活してほしいリストにはPRINCES PRINCES(以下、プリプリ)が入ってたんだけど、実現しましたね」

 

及川「震災後に1年限定で復活しましたね。しかも東日本大震災からの復興のために。仙台PITって、プリプリが建てたライヴハウスなんですって」

 

山吹「震災後、復興のために作られた音楽がたくさん溢れましたけど、話題性や宣伝のためなのかって議論が持ち上がったり、それをどう受け取るかっていうのは、正直ありましたよね。ハイスタは、震災から5年っていう区切りの年に完全復活しましたね」

 

小澤「ゲリラといっても、緻密に計算された5年間かもしれないですね。準備が整ったのが5年なのかなって思います」

 

山吹「人って区切りをつけたくなりますもんね。みんな震災のこと忘れかけてるかもしれないけど、まだまだなんだよ、一緒に盛り上げようっていうことなのかなと思いました」

 

小澤「さっきの話でも出てきましたけど、考えてみたら、今回取り上げた3アーティストは全員子供がいますよね。親になったからこそ、ああいう復興に向けた活動をしてるのかもって思いました」

 

及川「震災があって、多くの人が生と死とかを考えるようになったと思うんです。親だからこそ、子供達が生きていく日本、世界が豊かで平和なものであってほしいのかもしれない」

 

山吹「音楽から恩恵を受けたし、与える側となってリスナーのみんなにも感じてもらったし、音楽でどうにかしたいっていうことなのかもしれないですね」

 

 

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