MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜勢いがあったインディーズレーベル編〜

%e3%83%ac%e3%83%bc%e3%83%99%e3%83%ab-001

音楽とともに過ごした2016年もそろそろ終わり。皆さんが感じた2016年の音楽シーンはどのようなものだったでしょうか?
MUSIUM編集部では「話題となった大物アーティストの復活」、「勢いがあったインディーズレーベル」、「ストリーミングサービス本格スタート」、「今年流行した音楽のアプローチ方法」という4つの視点で、今年の音楽シーン、さらにこれからどうなっていくのかを語り合いました。
1年を振り返りながら、音楽ファンであるからこそ見えたシーンの変化と進化を、一緒に考えてみませんか?

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜大物アーティスト復活編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜ストリーミングサービス本格スタート編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜2016年流行のアプローチ編〜」

 

 

勢いがあったTHE NINTH APOLLO

及川「今年を象徴するトピックとして、今回私達が話すインディーズレーベルが挙がったのは、My Hair is Bad(以下、マイヘア)が話題になり、そしてマイヘアが所属するレーベル、THE NINTH APOLLOの勢いがすごいっていうところからなんですよね」

 

 「マイヘアがここまで話題になったのは、去年の夏にリリースした“真赤”がネットを中心に拡散されていった事と、オーディエンスによるライヴの口コミがSNSなどでじわじわと広がっていった結果だと思います。また、THE NINTH APOLLOには、マイヘアをはじめyonigeやさよならポエジーなど、今注目を浴び始めているバンドが所属していて、レーベルとしても勢いづいた2016年だと感じました。元々はメロコアのバンドが多かったレーベルなんですけど、今はギターロックのバンドも多くて、マイヘアでこのレーベルを知って、THE NINTH APOLLOに所属する他のアーティストも好きになるという人は周りにも多かったです」

 

My Hair is Bad – 真赤 (Official Music Video)

 

 

今井「THE NINTH APOLLOってどこにあるレーベルですか?」

 

「大阪ですね。代表は渡辺旭さんという方です。私は渡辺さんのSNSを通じてバンドの情報を知ることが多いです」

 

及川「その渡辺さんが発信するSNSから、リスナーは情報を仕入れて、拡散されて、大阪から全国に広まっていったんでしょうか?」

 

「そうですね。ネットの力が大きかったと思います。地方のバンドって東京のバンドよりも知られる機会が少ないと思うんです。でも、ネット上ではリスナーは、地方のバンドと東京のバンド、同じように出会えますよね。気になったバンドがあれば、ネットで情報を得て、そのバンドが東京に来る時にライヴに行く。そういう人が増えるに従って、バンドは広まっていきます。広まり方といえば、私、今年THE NINTH APOLLOのコンピアルバムを買ったんですよ。それがTOWER RECORDで99円で。こういうのも出会える音楽、好きなバンドが増えるきっかけになりますよね。この値段だと思わず手に取っちゃうし」

 

レーベルで聴くという聴き方

今井「最近『好きなバンド何ですか?』って聞かれると、僕だったら『kilikilivila(※1)に所属している様なバンド』とか言っちゃうんですよ。北さんだったらTHE NINTH APOLLOかな?レーベルを意識した聴き方をしているんだなって思います」

※1 kilikilivila

銀杏BOYZのアビコシンヤがチーフ・プロデューサーを務める。LEARNERSNOT WONKCAR10などが所属する。

 

及川「私だったらBayonって答えますね。Bayon内のサイドレーベルに所属している、D.A.N.Yogee New WavesNever Young Beachが好きなんです」

 

今井「Bayonも色がありますよね。クセの強い新進気鋭のバンドが」

 

及川「Bayonもレーベル聴きっていうか、1組好きになったら他のバンドも好きになる気がしますね」

 

今井「そういえば、去年はBayonのアーティストもひとまとめにシティポップと括られていたりもしましたけど、今年はもう括られない様に思います。そもそもダンスミュージックをバンドスタイルで追求するD.A.N.と、はっぴいえんど松任谷由実などに影響を受け日本語ポップスを現代解釈したYogee New Wavesの音楽は違った。今年はシティポップっていう言葉も、四つ打ちも言葉として聴かなくなった気がします」

 

「四つ打ちもメディアでよく使われてましたけど、今年はシーンを括る様な、ジャンルを示す言葉ってなかったですよね」

 

及川「いろんなジャンルが融合して、いろんな要素を持つ音楽が生まれていって、ジャンルが意味をなさなくなってきたからこそ、今はレーベルで括るんですかね。レーベルなら各々メディア露出の仕方だったり音楽性が近いことがあるし。去年だったらシティポップっていうジャンルの枠で話してましたけど」

 

今井「メディアでも、シティポップや四つ打ちっていう言葉が大枠過ぎて、ひとつの集団を表す言葉としてもう使えなくなってしまった感じがします。しかもジャンルで、四つ打ちだ、シティポップだって括られていたアーティスト達の一部は、その括りに違和感を示していました。『やっていること違うじゃん』って主張している人達を一括りにするのは、意味が無くなって来たんじゃないでしょうか。そして去年辺りから、マイヘアとかWANIMAとか、『 THE NINTH APOLLO所属です』『PIZZA OF DEATHのWANIMAです』って自分が所属しているレーベルを主張するバンドが注目され始めた。もしかしたら、レーベルっていう見方はシティポップ、四つ打ちとは逆に、アーティスト側から発信され始めた括りなのかもしれないですね。それがリスナー単位にまで浸透してきたんじゃないかなって」

 

「なるほど」

 

今井「暴論かもしれないんですが音楽って、囲い込みな面が強いと思うんですね。音源を作る、ツアーを回るっていう2つの基本の活動を回す為には音源を買ってもらって、ライヴに来てもらわなくちゃいけない。だから、ライヴが人気なアーティストならCDにライヴの先行販売券を付ける。CDを買ってくれた人を優先してライヴにも来てもらえるようにする。またはファンクラブを作る。年会費を払って貰い、ファンクラブに入ってもらってダイレクトに活動情報を届けて、ライヴチケットを優先販売する。言ってしまえば音楽シーンってどこにあるんだろうみたいな」

 

及川「その音楽シーンってどこにあるんだろうって、どういうことなんでしょうか?」

 

今井「要は各々のアーティストがいて、それに対してのファンがいるという、独立した島が乱立してしまっているのではないかと。それじゃあ、音楽シーンってどこにあるんだろう?と思うんです。CD売り上げでのオリコンランキングが必ずしも人気を図れるものじゃなくなってきていると思うし、フェスにおける各ステージの入場制限とか以外、測るものさしがないというか、枠がないですよね。で、話は戻って囲い込みという意味でアーティストが集めていた支持を、レーベル名を入れたグッズの販売やSNSの活用でもっと広いレーベルっていう単位で認識されてきたのが今年くらいなんじゃないかって思うんですよね」

 

及川「個人で立ち上げた自主レーベルもそういうことなんですかね。例えば最近だとシャムキャッツとか、本当に1アーティストだけのレーベルもそういうこと?」

 

今井「それはより自分達の意志通りの活動を全方位的に行いたいからじゃないですかね。信頼できる人達と、レーベルを立ち上げて、支出と収入を自分達でコントロール出来るようにする。自分達の責任を自分達で負えるようにする。これはファンやリスナーとしてもアーティストの意志をより感じられるようになりますよね」

 

「レーベルが好きだったら、レーベル主催のライヴとかあったら嬉しいですもんね」

 

今井「自分が好きなアーティストが自主レーベル立ち上げるとちょっとドキドキしますよね。ファン心理としては期待感が湧きます。マイヘアみたいにレーベルを自分からレペゼンしていくなら、あのバンドが好きだったらTHE NINTH APOLLOの他のアーティストを聴いてみようってなるかもしれないし」

 

これからはインディーズの時代?

及川「じゃあ今の時代に合うのはインディーズなんじゃないかっていうことですかね?」

 

「メジャーでもタイアップが全然売れないと聞きました」

 

今井「たとえば、サカナクションのレーベル、NFRecordsって、実際はメジャーの中だけど、独立した感覚があるじゃないですか。その独立感と、インディーレーベル感って近いなあって思って。メジャーの中にレーベルを作って、俺達はこういうことをやってるんだっていう表現というか。『メジャーの中のインディー』を作って、他とは違うところを見せたいのが、メジャーでもひとつの動きなのかなって。それに、タイアップでもCDが売れないっていう今は、インディーズレーベルで着実に支持を増やしていくっていうのが一つの形のなのかもしれません」

 

及川「でもメジャーレーベルでは、全国にいるプロモーターがテレビや地方のラジオに売り込みをかけてくれて、メディアへの露出は段違いに多いと思います。渋谷や新宿の巨大広告だって凄いお金がかかっているでしょうし、大型ビジョンなどは何十秒を何日間でいくら、というように、メジャーレーベルなら枠で買うこともできます。それに、インディーズだと限られてくる流通の問題も、メジャーなら全国のCDショップで販売してもらうことができますよね。やっぱり宣伝力はメジャーとインディーズでは比べ物にならないんじゃないでしょうか。一概に今の時代はインディーズだって言い切れないような気もします」

 

「あと、海外と繋がりがあるのはメジャーレーベルの強みですよね。Sony MusicやWARNER MUSIC、UNIVERSAL MUSICはメジャーレーベルの中でも海外に系列があるレーベルなので、日本だけでなく世界で活躍するバンドになるためには、メジャーに行くという選択肢がありますよね」

 

メジャーに行くということの意味とは?

今井「今までの話ってロックバンドは何組かを除いてメジャーにいっても成功しないっていうのが前提になっちゃてますよね。実際そういう例が最近ないからだと思うんですけど」

 

及川「音楽サイトのニュースとかでも『○○がメジャーデビュー!』ってお祝いムードの記事が出ます。それもなくなっちゃうんでしょうか?言われるけど空々しいみたいになっちゃうのかもしれないですね。意味をなさなくなるというか」

 

今井「今の時代、メジャーデビュー宣言がある意味、こいつら覚悟決めたんだなって。『よかったよかった!』じゃなくて、なんというか」

 

及川「戦地に赴くみたいな(笑)」

 

今井「お茶の間に行くために覚悟を決めたぜ、という宣言なのかもしれないですね。北さんは僕らの中だと1番メジャーのアーティストに注目していると思いますが、感覚としてメジャーデビューのニュースってどう感じますか?」

 

「インディーズバンドがメジャー決まったら嬉しいですね。タイアップは売れないって言われてても、そのバンドを知る人は多くなるものじゃないですか。そういう部分では、やっぱりメジャーに力はあると思います」

 

及川「CDはタイアップついても売れないかもしれないけれど、そのアーティスト自体を知る人は格段に増えますよね」

 

今井「そう言えば多分今って、タイアップつかなかったらCD出さないんじゃないですかね。今メジャーのアーティストがシングルでタイアップつけずにCDを出してますか?」

 

及川「バンドものの楽曲はまだいくつかあるかもしれないですけど、その他のジャンルでは、確かにほぼないのかもしれない」

 

今井「それって、タイアップってつけるのは前提なのかなって思うんです。もちろん相性であったり、つけない方がいいという選択をすることもあるんでしょうが。メジャーの人達って、お茶の間に曲を流すっていうのが、その人たちの業ですよね。それを背負っているんだと思うんです。要は、みんなの歌になりたいからメジャーレーベルで活動する。その中でも、ロックミュージックのマイノリティ意識だったり、自虐性みたいなものをバンドで表現しているのがメジャーのロックバンドですよね」

 

2016年のメジャー、インディーズ。そして、来年

及川「じゃあやっぱり今年に限らず、今後もインディーズが上手く行く時代になっていくんでしょうか」

 

「今年の話だと、WANIMAがすごかったなって思います。インディーズで『8×4』のCM曲になりましたし、ミュージックステーションにも出ましたし、来年はさいたまスーパーアリーナでワンマンも決まってます。メジャーにいく人は(キャパが)3000人のホールとか、アリーナとかを目指しているような人が多いんじゃないかと思っていたんですが、インディーズでもそれができるとなると……」

 

【8/3発売】WANIMA -ともに Full ver.(OFFICIAL VIDEO)

 

 

及川「メジャーの意味は?ってなっちゃいますね。PIZZA OF DEATHがインディーズの中でも大きいレーベルではあるっていうのもあると思うけど、インディーズでもなんでもできちゃうんだってなりますよね」

 

「メジャーにいく意味が本当になくなっちゃいますよね、やりたいことができるなら。窮屈なだけってなっちゃうかもですよね。バンドの性格にもよりますけど」

 

及川「世の中に求められる音楽と自分が作りたい音楽性が同じようなミュージシャンは、メジャーレーベルが向いているのかなって思いました」

 

今井WANIMAってドカーンって売れましたけど、WANIMAがPIZZA OF DEATHでさいたまスーパーアリーナでやるっていう、そこに感化される次の人達がいっぱいいたら、メジャーってどうなるんだろうって思います。もしかしたら今後、歌モノのメジャーライクだったバンドも、そういうギターロックが超強い、昔だったらメジャーだろっていうバンドが集まるインディーズレーベルができたりして。それで、そこですごい人気なアーティストが1個ポンって出てきちゃったら……」

 

「それはありえそうな気がします。誰かがギターロックの強いレーベルを作って、どんどんそのレーベルが大きくなって、今のWANIMAのポジションのギターロックバンドが生まれて、そこでレーベル聴きを初めるリスナーがいて」

 

今井「そうですよね。メジャーでもビクターの中にCONNECTONEっていうレーベルがあるんですけど、SANABAGAN.とかぼくのりりっくのぼうよみとか、個性的な才能を集めてリリースしていますよね。こうした今までにない挑戦みたいなことをしているメジャーレーベルもある」

 

「他のメジャーレーベルからもインディーズを意識したようなレーベルが増えるかもしれないですね」

 

及川「あと、もしかしたらNFRecordsはインディーズになるのでは?って思ったんです」

 

今井「えっ、どうしてですか?」

 

及川「これまで話をしてきて今まではインディーズからメジャーへっていうのがセオリーだったけど、これからはメジャーからインディーズっていう形もあるんじゃないかと思って。サカナクションはミュージシャンだけじゃなくて、スタイリストさんやメイクさん、デザイナーさん達と一緒にクラブイベントや配信型の番組をやってるじゃないですか。メジャーレーベルにはそういった裏方と呼ばれる人の所属は考えられないけど、そういう人達と一緒に、今までのレーベルの形に囚われない新しいレーベルをやるんじゃないかなって。音楽性だけじゃなくて業種の垣根も超えたような。化学変化が起きて見たことも聴いたこともない、新しい音楽だったりアートだったり、面白いものが生まれそうだなって思います」

 

今井「うーん、なるほど。そんなことになったら大ニュースですね」

 

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜大物アーティスト復活編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜ストリーミングサービス本格スタート編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜2016年流行のアプローチ編〜」