私とサカナクション

名称未設定.001

 

 私の、あらゆるきっかけは“ルーキー”でした。

 

 

私とサカナクション

 

私の本業は、お菓子屋です。

 

“新宝島”の跳ねるようなシンセと未来への決意。MVのネオンのようにいろいろなフルーツを球体にくりぬいて並べて、カラフルで力強いケーキにしよう。

 

“モノクロトーキョー”は真っ白なケーキの上に、「東京」をモノトーンで、「あこがれ」をレインボーカラーでアイシングしたクッキーを飾ろう。味は東京を生きるほろ苦さを表す、ビターなチョコレート。

 

“シーラカンスと僕”を聴いて、私も夜を、海を泳ぐ魚になれた。光に反射してキラキラ輝く鱗の美しさを、クラッシュしたゼリーで感じられるように。

 

“ユリイカ”のMVで一郎さんが滑らかになでていた美しい女性の曲線は、柔らかいカーブをつけたチョコレート細工で表現する。紅茶やハーブの代わりに、ほんのりどくだみ茶を香らせたシロップを生地に染み込ませて、この曲から感じたノスタルジーを味わってもらう。

 

“目が明く藍色”は、白と藍色がマーブル状になるようにムースの周りをコーティングする。曲の最後、哀しみに打ちひしがれた夜が明けて光が射してきたように、ケーキを切ったらアプリコットの優しい甘さと酸味のソースがこぼれるようにしようか。

 

“Ame (B)” SAKANATRIBE Remixのライヴで感じた内蔵にまで響く低音。大粒のナッツや固めのクッキー生地を挟み込む。BPM=約130で噛みしめればゴツゴツとした骨太のビートを味わえる。

“ルーキー”の、ライヴでの鋭いレーザー光線を表すのはやっぱり飴細工か。練習しなくちゃ。

 

数年前、街中で耳にしたメロディが気になって気になってしょうがなくて、SHAZAMをしたら“ルーキー”だとわかって、TSUTAYAに走り、彼らの今までのアルバムやシングルのカップリングまで片っ端から聴いて、ライヴに足を運ぶようになってからというもの、私の頭の中はこんなことになっている。
クラブミュージックのビートが生み出す高揚感、フォークソング由来の歌詞が持つノスタルジー、生のバンドによって創りだされる躍動感を持ち合わせたサカナクション。彼らに切なさや郷愁、喜びや興奮、生きていることの実感、体が動くままに踊ることの楽しさ、今まで知らなかった音楽や音楽にまつわる様々な仕事まで、たくさんのことを教わった。
それだけではない。「お菓子と音楽を融合させることはできやしないか?」という、友人には変態だと言われるようなイマジネーションや、「やってみないと始まらないじゃないか!」という、一歩を踏み出す勇気も与えてくれた。新しいことにどんどんチャレンジして、夢を現実のものとしていくサカナクションに刺激を受け、私も前に進んで行きたいと思う。

及川 季節