MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」~ストリーミングサービス本格スタート編~

%e3%83%97%e3%83%ac%e3%82%bc%e3%83%b3%e3%83%86%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%b317

音楽とともに過ごした2016年もそろそろ終わり。皆さんが感じた2016年の音楽シーンはどのようなものだったでしょうか?
MUSIUM編集部では「話題となった大物アーティストの復活」、「勢いがあったインディーズレーベル」、「ストリーミングサービス本格スタート」、「今年流行した音楽のアプローチ方法」という4つの視点で、今年の音楽シーン、さらにこれからどうなっていくのかを語り合いました。
1年を振り返りながら、音楽ファンであるからこそ見えたシーンの変化と進化を、一緒に考えてみませんか?

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜大物アーティスト復活編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜勢いがあったインディーズレーベル編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜2016年流行のアプローチ編〜」

 

 

音楽ストリーミングサービス、使ってる?

古川 「今年の9月29日からSpotifyがついに日本でエントリー制でサービスを開始し、11月10日から一般公開となりましたね。Apple MusicやGoogle Play Musicなどの今までリリースされていたものとは違って、Spotifyは無料でも楽しむことができ、現在の音楽ストリーミングサービス(以下、ストリーミング)のマーケットの中で世界最大のユーザー数と楽曲登録数を誇っています。そんなSpotifyの日本版が出来たということで、日本においてもに主要なストリーミングが全て出そろったという状況になりました。海外では音楽の聴き方としてストリーミングは既にメジャーになっていますが、日本ではまだまだ一般に浸透していないという現状があります。そこで最初に、皆さんの利用状況を聞いていきたいと思います。普段から洋楽を聴いているという今井さんは、海外の音楽シーンなど日ごろから気になっていると思うんですが、実際にストリーミングを利用してますか?」

今井 「僕は今、Spotifyの無料版とApple Musicを使っています。海外ではストリーミングが主流なのは洋楽リスナーにとっては周知の事実だし、利用していると海外のシーンをリアルタイムで知ることが出来るので、欠かせないものになっています」
 

古川 「と、言いますと?」

 
今井 「Apple MusicにはBeats 1というラジオ機能があって、有名なDJやアーティストが個人で持っているラジオ番組を24時間聴けるんですよ。日本における洋楽の情報は基本的に翻訳された二次的なものが多いので、生ラジオでダイレクトに洋楽の情報が入ってくる点で画期的だし、メディア的機能を持ち合わせているんです」

  19087490340_8c8550da0f_z

 

遠藤 「Spotifyも使っているのはどうしてですか?」

 

今井 「Spotifyにしかない音源もあるという点もあったりしますが、一番の理由はApple Music以上にプレイリスト機能が充実しているからです。Spotifyは個人がプレイリストを作れる様になっていて、プレイリストを通じたSNS的な楽しみ方も出来る。無料版だと曲と曲の間に広告が入ったりしたりと不便なところはありますが、無料でも十分音楽を楽しめます」

 

遠藤 「私もSpotifyの無料版を使っています。今までも他のストリーミングを無料トライアル期間で使ったりしたんですが、ストリーミングにお金を払うなら少しでも貯めてCDを買いたいので、有料会員にはなったことがないです」

 

古川 「CDを買う派だけど、無料であればストリーミングを使いたいとは思うんですね?」

 

遠藤 「そうですね。使い方としては、少し気になったアーティストを調べて、人気曲のプレイリストを聴いて、いいなって思ったらCDショップに足を運ぶという感じです。あと、買わなかったシングルのカップリング曲が聴けるっていう点では重宝してます」

 

古川 「なるほど。私は逆に、よっぽど好きなアーティスト・好きな作品じゃないと基本的にCDは買わないです。YouTubeの影響もあって音源はできるだけ安く手に入れたいっていう意識が強いので。LINE MUSICを学割料金で使うだけ、ってことも多いです」

 

今井 「学割って?」

 

古川 「学割だと、1ヶ月聴き放題のプランが600円、1ヶ月有効で20時間分再生できるプランが300円なんですよ。TSUTAYAで1枚のアルバムを借りるのってだいたい300円ぐらいですよね。その値段でアルバム何百枚も聴けると思うとめっちゃ安くないですか」

 

遠藤 「安い、学生には嬉しい値段……!!」

 

今井 「今までの話をざっくりまとめると、僕は海外シーンとのリンクのためストリーミング肯定派、古川さんは安いからストリーミング肯定派、遠藤さんはCDが好きだからストリーミング否定(部分的には肯定)派って感じで、遠藤さんみたいなタイプがまだ日本では主流だよね。同じくお金を掛けるならCDじゃなくてデータ配信でもいいんじゃないかなとも思うんだけど」

 

遠藤 「確かに音源にお金を払うって事ではそうなんですが、それを目に見える形で持っていたいというのもあってCDを買っています。データって目に見えないじゃないですか。お金払ったのに持ってる気がしないというか……」

 

古川 「持っていたいっていう、モノ消費ってやつですよね。配信ってお金を払ってるけど、それに対する所有感ってのは得にくいかも。だから配信にお金をかける必要性が見いだせないんじゃないんですかね」

 

今井 「それって音楽に限らず色んな所でも言われてますよね。実際日本でのデジタルの配信はストリーミングの前のダウンロードでも流行らなかったりして。CDというモノで持ってたい、モノ消費ってのが間違いなくあるからだと思います」

 

海外と日本、音楽の聴き方の違いは?

古川 「そういった日本のリスナーの傾向も踏まえつつ、次に音楽ストリーミングサービスが上手く回っている海外と、日本との音楽の聴き方の違いについて考えてみたいと思います。今井さんは洋楽を聴かれると思うんですけど、やっぱり海外と日本とでは聴き方の違いは大きいと感じますか?」

今井 「って言われますよね。日本ではまだCDが主流だけど、海外じゃ今の主流はストリーミングだから。モノって話が出てきて思うのはタワーレコード。渋谷にあるタワーレコードに来ると写真を撮る外国人がいるって話を聞くんですけど、それはタワーレコード発祥のアメリカには、今1店舗もないからで」

 

遠藤 「え、そうなの?? 日本のタワレコはどのコーナーにもポップがあって、いつも活気だっているからびっくり」


今井
 「それぐらい、モノで聴くっていう事が一般的じゃないのがアメリカだと思う。ストリーミングが主流になってきている音楽シーンに対応しているミュージシャンも出てきていて、チャンス・ザ・ラッパーっていうシカゴ出身のラッパーがいるんだけど、彼が今年出した『Coloring Book』っていうアルバムはストリーミング限定でのリリースによる作品とし初めて全米チャートでトップ
10入りしたんです。CDを刷らないで音源をリリースするミュージシャンが、かなりの人気を集めているっていう事からしても、モノで音楽を聴く文化が無くなってきているのが、海外の現実なんじゃないかな」

 
遠藤 
「その人って、
CDを売らないどころか、音源を売らずにやってきたって人だよね?海外にはそんなアーティストがいるなんて、CDの文化がまだまだ残っている日本では考えられない」


今井
チャンス
・ザ・ラッパーの新作とか、最近はストリーミングで急に音源を発表するミュージシャンが増えていて、そういう時は『曲をリリースしました!』じゃなくて『曲をシェアしました!』みたいに言うんだって」

 

Chance the Rapper ft. 2 Chainz & Lil Wayne – No Problem (Official Video)

 

 

遠藤 「おもしろい!逆にどうしてCDからストリーミングの時代へと海外では上手く流れていったんでしょうね。音楽の聴き方の文化的な背景で、日本と海外で違うものがあるからなんだろうけど」

 

古川 「アメリカでは車文化とラジオ文化は切っても切り離せないものだと聞いたことがあります。広大な土地が広がるアメリカでは車移動が基本で、その車内でかける音楽といえばラジオなんだって」


遠藤
 「日本人が電車で移動してるときに音楽プレイヤーからイヤホンで聴いているのと、車の中でラジオから音楽を聴いているのって同じ感覚なのかな」


今井
 「それはあるかも。今は違ってきてるんだけど、昔は海外のシーンでラジオの力が強かったって聞いたことがある。アメリカ全土で見ると数えきれないほどの局数があって、色々なジャンルのラジオがあるんだって。あとアメリカのラジオが日本と違うのは、日本だと音楽よりパーソナリティのトークがメインみたいなところがあるけど、アメリカだとトークよりは次々と音楽が流れてくる感じなんだ。その次々と音楽が流れてくるラジオの機能って、ストリーミングのプレイリスト機能と同じものなんじゃないかな。つまりストリーミングがラジオに取って代わったから、ストリーミングが広く普及したんじゃないかってのも考えられるよね」

日本の音楽市場=CDで売りたいし、買いたい

古川 「アーティストもリスナーも当たり前にストリーミングを活用している海外の状況と比べると、日本ではストリーミング限定のリリースっていうのは聞いたことがないし、リスナーの利用率も低い。言ってしまえば、世界の潮流に乗り遅れてますよね」

 

今井 「まず、日本の音楽ストリーミングサービス自体が2015年から始まったっていう事があるよね。だけど、ストリーミングサービスが流行っていないのって音楽ぐらいじゃない?Netflixとか、Huluとか映像のサービスは一般的になりつつある。でもそういうような感覚が音楽ではまだ根付いてないのは何でだろう?」

 

遠藤 「さっきのラジオの話だと、日本ではラジオから音楽を聴くって文化はアメリカほど根付いてはいませんよね。音楽はCDだったり、少し前だとテープとかレコードとかで自分の聴きたいものを選んで聴くという形で、人にキュレーションされた音楽を聴くっていう文化ではなかったですよね」


古川 
「自分の手元にある音楽を聴くって感じですね。遠藤さんって普段からCDを買っていて、音源にお金を掛けるし、持っていたいってタイプでしたよね?」


遠藤 
「そうですね。中高生のときはオリコンで自分の好きなアイドルをランキング1位にしたいと思って買ってたんだけど、いまCDを買うのは、単純に気に入ったから持っていたいって感じかな。モノとして手元にあると、それにまつわる思い出とかできたりするじゃないですか。たとえば『あ〜、このCD、あのときにこんな気分で買ったな〜』とか。モノがあると結構前の記憶でも思い返せたりできますよね。でもダウンロード配信にしても、ストリーミングにしても、そういう記憶との結びつきって弱いんじゃないかなって思っていて、数十年後に『あの曲なんだっけ?思い出せない……』で終わってしまったらと考えると寂しいなってなっちゃうんですよね。だから形として残らないものにお金を払うのはためらってしまいます」


今井
 「CDを買ったり、CDを友達に貸したらプラスチックケースが割れた!とかね(笑)そういうのも含めて体験というか、曲とリンクしてそういう思い出があるよね」


遠藤
 「あのCD、未だに返ってこないんだけど!とか(笑)」


今井 「CDのように、モノとして形のあるものにはお金を払いたいけど、ストリーミングサービスなど形の見えないものへお金を払うって感覚が、まだ日本に根付いてないですよね。日本で音楽ストリーミングがまだ大衆化していないのは、そういう感覚の問題もあるかもしれない」

 

古川 「それもあるかもしれないですが、それ以上にストリーミングに対する音楽業界側の姿勢によるものが大きいと思うんです。日本の音楽チャートで上位に入るようなポピュラーな邦楽アーティストって、ストリーミングで配信してない人が多いじゃないですか。たとえば、ジャニーズとかMr.Children 、aikoサザンオールスターズとか」

 

遠藤  「業界側として、CDを消費するっていう方向との両立が出来てないっていうのもあるだろうし、意図的にストリーミングを避けていることもあるだろうね。それはアーティスト本人の意思であったり、プロダクションやレーベルの意思であったりするんだろうけど」

 

古川 「音楽の作り手側が意図的にストリーミングを避けるっていうのは、何故なんでしょうね」

 

今井「CDで売る方がお金になるから、というよりは、ストリーミングというもので音楽の未来が見えないっていう、可能性と将来性の問題なんじゃないかな。モノ消費が強い日本のマーケットで、所有感の少ないストリーミングは、まだ有料会員数を伸ばし切れていない現状があるし、そこに自分達の音楽を加えても、見合うだけの利益を得られない。もしかすると、自分達の音楽が追加されてもファンはCDで買うから、ストリーミングは育たないんじゃないか、って思っているのかもしれない。ストリーミングに対して、収益も成長の期待も、核心が持てないんじゃないかな。ただ、海外では大物アーティストもほとんどストリーミングで配信してる状況と比べると、そういった作り手側の意思によってポピュラーな邦楽アーティストがストリーミングには少ないっていうのは、結果的に日本のリスナーがストリーミングを利用する上で不便な要素になってるのは確かだよね」

 

音楽ストリーミングサービスの未来

古川 「では、これまでの話から見えてきた現状の課題点をふまえて、日本ではストリーミングは今後どうなっていくのか、上手く回していくにはどうしていくべきかということを考えていきましょう」

 

今井「日本でストリーミングが大衆化していくのはまだ時間がかかると思う。さっきも言った通り、配信を許可していない邦楽アーティストが多いから。音楽業界側の姿勢がまずは変わらないことには、海外みたいに音楽の聴き方の主流になっていくのは難しいんじゃないかな」

 

遠藤 「私もそう思います。今のストリーミングって普段からアクティブに音楽に接してる人にとってはいいものなんだけど、それ以外の人にとってはあんまり魅力的ではないと思うんです。今期話題のドラマ『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』を見て、主題歌の星野源の”恋”をフルで聴きたいなって思っても、星野源はストリーミングには入ってないんですよね。Spotifyがいくら無料だって言っても、大衆的なアーティストがいなかったら音楽ファン以外は使わないんじゃないかな。今はヒット曲っていうものがないような感じだけど、やっぱりその時の流行りの音楽をみんな求めてると思うんです。どんな人でも楽しめるサービスが出来上がらないと普及していくのは厳しいんじゃないかな」

 

古川 「この課題をクリアするにはまだ時間がかかるとして、現状でユーザーの母数を増やすならまずは、音楽好きの人へのアプローチが欠かせないですよね。もっと音楽好きの人を取り込めると思うストリーミングの機能だとか、強みって何でしょう?

 

今井 「まず、邦楽しか入ってないストリーミングはないじゃないですか。邦楽しか聴かないっていう人も洋楽を聴くきっかけになるってことを洋楽リスナーとしては言いたい」

 

古川 「私まさにその邦楽しか聴かない人なんですけど、ストリーミングで『【Suchmos】ルーツ・ミュージック』っていう、Suchmosのメンバー自身が選曲したプレイリストを見つけて。選曲がすべて洋楽だったんですけど、聴いてみたら良い曲がいっぱいあって、新たな出会いがありました」

 

今井 「アーティスト側も、自分のルーツとか要素のひとつを出せる場になるかもですよね。自分たちのルーツの音楽が、今までだったら雑誌とかのインタビューで載ったこともあっただろうけど、ストリーミングだと、もうこれを押せば聴けますよ、っていう状態で紹介できるじゃないですか。それはアーティスト側にとってもいいことだと思う」

 

遠藤 「リスナーにとっても、プレイリスト機能は色んな使い方ができて便利だよね。私の場合はCDを買う前の見本市的な使い方をしてるっていう話をさっきしたけど」

 

今井 「CDはあまり買わなくてもライヴには結構お金かけるっていうタイプの人にとっても便利だよね。ストリーミングには『ライヴの定番プレイリスト』とかあるから、あんまり知らないアーティストでも、それ聴いて、いいなって思ったらライヴに行く、っていう。ストリーミングのそういう使い方もある」

 

古川 「ライヴの予習に便利ですよね。しかもLINE MUSICではアーティストがライヴを終えた後にセットリストをプレイリストとして公開していたりして、ライヴの復習もできる。ストリーミングのプレイリスト機能は、ライブとの親和性がすごく高いと思います。なので、まずはライヴに来る人達にアプローチしてみるのはどうですかね。『ご来場いただいた方に〇〇MUSICの1ヵ月聴き放題パスコードを無料プレゼント!』とかいう試みをしていって使ってもらう。サービス開始時にも無料トライアル期間はありましたけど、時間が経って使い勝手が良くなっていたりするので。そうやって地道にライヴで無料チケットを配るっていうことを続けていって、『使ってみたら意外と便利でさ~』みたいなプラス評価がどんどん友達に口コミとかで広がっていけば、少しずつでもユーザーは増えるんじゃないかって思います」

 

今井 「口コミっていう部分ですごく思ったのは、ストリーミングはSNSで曲をシェアできるじゃないですか。でも、Twitterとかでシェアしても、シェアされた側が会員じゃないと30秒とかしか聴けないんですよ。実際に自分がTwitterでApple Musicでシェアしたときに遠藤さんに『YouTubeだったら聴くのに』って言われたことがあって」

 

遠藤 「『Apple MUSUCで聴こう』ってツイート見ても、(契約してないから)聴かない。っていつも思う(笑)」

 

古川 「私もLINE MUSICで聴いてて『この曲やばい、みんな聴いて!!』って思っても、フルで聴いてほしいからYouTubeでわざわざリンク探して貼ります(笑)」

 

今井 「あるある(笑) 今のままじゃ、ストリーミングでシェアしても音楽好きの人にすら聴いてもらえないですよね。だったらシェアする意味がない。だから、シェアされたSNSで1回目にタップしたときだけは会員じゃなくてもフルで聴けるとか、そういう機能があればいいな、流行るんじゃないかな、って思いますね」

 

古川 「それ名案だと思います! アーティストやレーベルといった音楽業界側の意識も、ストリーミング側の機能も、リスナーのリアルな要望に沿うものに変化していって、日本の音楽リスナーにストリーミングがもっと浸透していけばいいですね」

 

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜大物アーティスト復活編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜勢いがあったインディーズレーベル編〜

 

MUSIUM DISCUSSION「音楽でふりかえる、2016年」〜2016年流行のアプローチ編〜」