就職活動生よ、これが音楽業界だ。〜アーティストマネージャー編〜<前編>

スクリーンショット 2016-06-08 20.39.23

 

就職活動生よ、

これが音楽業界だ。

〜アーティストマネージャー編〜<前編>

 

 

3月から本格的に始まった就職活動。

 

ESにグループディスカッション、面接、と人によって様々な段階に差し掛かっているところだろう。そんな中、少しスタートの遅い音楽業界(校長鹿野註:ただでさえ、ネット業界に面白い人がとられているのに、音楽業界は就職時期を遅くしちゃうと、より、良い人材が来なくなるじゃないか。)。当サイトをご覧になっている読者の方の中には、この業界を目指している人もいるのではないだろうか。

 

今回はそんな音楽業界において、アーティストマネージャーという仕事にスポットを当てた。今、バンドシーンに欠かせなくなったロックバンドKEYTALKを小さなライヴハウス時代から支え、武道館へと共に歩んだアーティストマネージャー、古閑裕さんにインタビューを行った。アーティストマネージャーとしてKEYTALKと歩んだ日々、そして就活生達の周りで渦巻く「音楽業界の仕事は楽しい」「アーティストと仲良くなれるよ」「音楽業界は儲からないよ」「音楽業界はブラックだよ」といった噂についてもざっくばらんに語ってくれた。

 取材・文/畠山 拓也 小澤 一樹
撮影/畠山 拓也

 

レーベルのスタート
〜かっこつけでレーベル始めました〜

−−まずはズバリ、就職活動生に対して音楽業界に入るべきか入らないべきか、古閑さんのご意見をください!

古閑裕(以下、古閑)「音楽が好きで音楽に携わる仕事も本当に好きで、本気でやりたいって思っているのであれば目指してもいいんじゃないですか。ただ、それがもしかしたら苦労になってしまうかもしれない人にはおすすめしません。今はCDも売れない時代ですし、色んな音楽のシステムとか変わってきている時代だと思うんですよ。そんな時代でも音楽の仕事に誠意を持って取り組めるかどうかも考えて欲しいですね。昔は音楽ってエンタテインメントの中では結構上のランクだったと思っていたのですが、今となっては、映画やCMを際立たせたり、装飾するためのものだったりするので、メインの存在ではなくなってきていると思うんですよ。言い換えると、色んなエンタテインメントを作り上げる手段のひとつ」

−−古閑さんからみる音楽とはBGM的になってるということですね。

古閑「そうです。僕は音楽が好きなんでメインの存在であると思ってますけどね。だけど、ある芸術の一部になっている。だから、それを生活の手段として稼ぐのは相当厳しい世界かもしれないですね」

 

−−古閑さんはなぜ音楽を仕事にしようとしたんですか?

古閑「僕は元々、ヴィーナス・ペーター(渋谷系という90年代中期にムーヴメントの中心のバンドのひとつ)というバンドを組んでたんですよ。一度は大学を卒業して、2年半くらい医療系の仕事をしていたんですけど、大学時代、高校時代にやっていたバンドが忘れられなくて。やっぱり一生に一回しかない人生だから、自分の好きな事をやんないと後悔する。と思って就職もしつつ、バンドをまた始めたのがヴィーナス・ペーターというバンドで、それが幸運にも人気が出ちゃって(笑)。それがUK Projectの中のレーベルからCDを出したんですけど、その音源がインディーズチャートで1位になってメジャーからの話が来ました。2年後にはメジャーデビューしたんですよね。ただ、全部うまいことはいかなくて、メンバー間の活動の温度差とかあったりもして、結局バンドは解散しちゃいました。ちょうどそのとき、アルファレコード(※現在は存在しない、かつてはYMOなどを排出した巨大なカルトレーベル)で働いていたんですけど、その時に、アメリカとかイギリスで、インディチャートとかカレッジチャートとかコアな音楽のチャートがあったんですよ。インディーズの音が僕は大好きで、僕もインディーズレーベルやったらかっこいいなと思って、ホントにかっこつけで始めました(笑)。ただ一切儲けるとは考えてなかったんですよ」

−−レーベルの景気はどうでしたか?

古閑「それが幸運な事に当時はインディーズが流行ってた時期で、出せば売れる時代だったんです。そしたら、自分ではカッコイイと思って出した無名なバンドたちの音源が今では考えられない3,000枚とか5,000枚とか売れたんですよ」

 

今の古閑裕
〜KEYTALKとの出会い〜

−−その経緯を経て今、古閑さんは具体的にどういったお仕事、役職をされているのですか?

 

古閑「インディーズのレーベル(KOGA RECORDS)をやっているオーナーです。インディーズのレーベルって具体的に言うと音楽に携わるすべての事をやっています。新人を発掘したり、業者さんと相談してCDプレス何枚にするか決めたり、流通をしたり、アーティストの窓口やライヴブッキングやったり。ただ、インディーズだけじゃ面白くないなあと思っていた時にKEYTALKと出会いました。彼ら最終的にはメジャーで飯を食いたいという願望持ってて『古閑さん、お手伝いして下さい』と彼らから言われました。じゃあまずはインディーズからやって、メジャーに一緒にいこう、という形で始めたんですよ。将来のマネージメントまで考えた初めてのバンドだったので、すべてが初の試みでした。結果として、目標としていたメジャーレーベルからのオファーもきたし、KEYTALKに関しては、僕はマネージメントという立場で、彼らの音楽を広げていくというお仕事をここ何年かやっていますね」

 IMG_5196

成功体験
〜ライヴの経験が大事〜

−−マネージメントをする中で、成功体験は何ですか?

古閑「インディーズ時代から台湾を含め、日本各地でライヴをやらせて、人を楽しませる事に慣れさせる育て方をしたことだと思います。3年ぐらい、小野武正の親からもらった自家用車で全国各地をライヴし続けました」

−−ちなみにKEYTALK TVでよく出てくる車って….

古閑「そう!武正の親からもらった車なんだよ(笑)」

 

【KEYTALK TV】2012.12.6(part.2)-義勝、車を運転する(実践編)

 

−−こんなにもライヴをさせるのはやはり、古閑さんが元バンドマンだったからですか?

古閑「そう。やっぱりライヴやってなんぼだよね。この経験のおかげで、地方都市からもどんどんとお客さんが増えていきました。元々、彼らのライヴは今みたいに楽しくなかったんですよ。ですけど、今は腹抱えて笑えたり、泣けたりするじゃないですか。これは、彼らが地道にライヴで実力をつけていった結果だと思います」

 

失敗体験
〜インディーズとメジャーの違い〜

−−では逆に、失敗体験はありましたか?

 

古閑「失敗ってなんだろうね(笑)。マネージメントでの失敗は無いかな。所謂、メーカー(※ビクターエンタテインメント(以下、ビクター))とアーティストとの橋渡し役でもあるし、橋渡しの中でマネージメントをどうやればいいのかを理解していなかった部分でメーカーとの信頼関係が結果うまくいかなかったことはありますね」

−−具体的にお聞きできますか?

古閑「例えば、お酒飲んで酔っ払って裸になったりとかしてた時期があったんですね。そういうのって写真を撮られたりするんですよ。まだメジャーデビューする前の写真なんだけど、ネットにあがっちゃったんですよね。それをメーカー担当者さんが見ちゃってこれはマネージメントの管理責任だと。ネットにあがる事を管理していないと、お叱りを受けた事があって。契約を結ぶ前の話なのですが、ここまで来るとそこにもマネージメントの管理責任を持たなきゃいけないのかなと。どちらかというと反省かな(笑)。一般的な見方をすればスキャンダルになってしまうから、今後マネージメントをするうえでは公的な場で控えなければいけないことをアーティストに教えないといけないと思いました」

 

アーティストマネージャーの苦労
〜メーカーとアーティストとの橋渡し〜

−−そんなマネージャーというお仕事の中で大変だった事は何ですか?

古閑「メーカーとの話し合いだと思うんですよね。僕達もメーカーも最終的にはKEYTALKの音楽を世に広めるという目的を持ってやっているわけだから、一緒に頑張っていきたいんです。ただ、こっちの立場とメーカーとの立場が少し違うので、それを同じ目線にするのが大変です。こちらの主張を曲げたくないけど、あちらの主張も取り入れていかなければならない。それをまた、アーティストと話し合うのも僕の仕事で大変な所ですね。アーティストのしたい事は最大限やらせたいので、そこで僕が諸々調整しているわけです」

−−とてもお忙しいとは思うのですが今、アーティストのスケジュールはどのように組まれているのですか?

古閑「KEYTALKで言うと、1年間の活動全てのおおまかな計画を立てます。ここでイベント、ここでリリース、ここでツアーみたいな。メーカー担当者と会議して、ライヴツアー制作会社担当とも会議して1年間のスケジュールを組みます。流れは例えば音源、ツアー、夏フェス、レコーディング、という流れです。ちなみに、その間にタイアップの音源制作とかTV番組出演とかも入ります。そういう突発的なものも入って1年間が終わります。とりあえず休める時期はないです(笑)。極論言うとそれが自分達のやりたいことなわけだから、年がら年中趣味やってるみたいなもんじゃないですか。好きなことやれてるわけだから、こんなに幸せなことないと思います」

−−その中でも、特に忙しい時期はいつですか?

古閑「ツアーを廻ってる時です。ツアー中に他のアーティストのこともやらないといけないのが特に大変。他のアーティストの制作しなきゃとか、新人の発掘しなきゃとか。だから自分が3人欲しいぐらい(笑)」

 

就職活動生よ、これが音楽業界だ。〜アーティストマネージャー編〜<後編>」はこちら。ぜひ、あわせてお読み下さい。

 

【関連記事】

KEYTALK hello wonder land画像

KEYTALK『HELLO WONDER LAND』「結束固まる」

 

KEYTALK

KEYTALK 『HOT!』「夏のBGMになるアルバム」