私と嵐

watashitoarashi

泣いても笑って、明日を探す。

私と嵐

 

<未開拓地をまたまた開拓 LIGHT UP ! 聴衆灯せ 松明>これは”Re(mark)able”という楽曲のワンフレーズ。私にとって嵐は、未開拓地を開拓する、まさに開拓者というイメージがある。
嵐は1999年にデビューしてからなかなかヒットに恵まれないグループだった。2000年代前半を小学生として過ごしてきた私にとって、ジャニーズといえばSMAPだった。その嵐が注目を浴びだしたきっかけは、間違いなく松本潤主演のドラマ『花より団子』であろう。私は21時就寝が鉄則の家で育ったので当時ドラマを観てなかったが、主題歌“Love so sweet”を友達に教え込まれ、音程が違うと怒られ続けた苦い記憶と、嵐なんて好きにならないと小さく決意したことを今でも思い出す。その小さい決意は数年後、大野智主演のドラマ『魔王』にハマったことでどこかに行ってしまったが。
私が彼らを開拓者だと思ったのは、自分達の想いや意志といったものが彼らの原動力になっていると感じたからだ。それまでのアイドルが事務所の敷いたレールの上を走っていたとするなら、嵐はある時から自らレールを敷くようになった。その礎にはサクラップと呼ばれる、櫻井翔がリリックを手掛けるラップパートが深く関わっているのではないかと考えている。アイドルが自分の声を歌詞にして届けるのは異例のことだったはずで、彼らが自ら舵をとるきっかけになったに違いないからだ。ファンこそ知る曲になってしまうが、櫻井がリリックを手掛け、メンバー全員でラップを回していく“COOL&SOUL”と“Re(mark)able”という曲がある。“COOL&SOUL”は嵐が初のアジア公演を行った2006年に、“Re(mark)able”は初の国立霞ヶ丘競技場公演、二度目のアジア公演を行った2008年に発表され、彼らが新たなステージを迎えるときに生まれた。嵐自身について歌われているこの2曲に共通していえるのは、「誰も見たことのない景色を切り拓いてやる」といった彼らの決意と、底なしのハングリー精神だ。アイドルとしての煌びやかさではなく、私はその泥臭さに惚れてしまったのだ。
そんな彼ら自身の意思が作品にハッキリと現れだしたのが、2012年に発売したアルバム『Popcorn』以降である。「ポップ」をコンセプトに、言葉遊びでポップコーン。理屈抜きに誰もが楽しめる、個々の良さが弾けるポップなアルバムになっている。メンバー自身がアルバムのコンセプトを決め、それにあった楽曲を選んでいくという制作スタイルが確立してきたのがこの時期だ。また、このアルバムを発売する1ヶ月前に開催したライヴ「アラフェス」ではファンから全楽曲のリクエスト投票を受け付け、それをもとにセットリストを組んでライヴを行った。ファン感謝祭ともいえるこのライヴの特筆すべき点は、嵐が5人だけで、およそ3時間やりきったというところにある。通常、ジャニーズのコンサートではジャニーズJr.がバックダンサーとして付くが、それが付かないというのは異例のことだった。嵐の5人が会場の7万人のファンと、ひとつのコンサートを作り上げたいという想いが反映されて実現されたライヴだった。嵐とファンだけで作り上げる、なんとも羨ましい空間。チケットが取れなかった私は、炎天下の人間蒸し風呂の中で6時間物販に並んで国立競技場を去った。
このコンセプトをもとにアルバム制作する流れは翌年以降も続き、一昨年その集大成ともいえるアルバム『Japonism』が発売された。そしてこのアルバムを引っ提げたコンサートツアーに参加するために、私は関東から北海道まで飛び立ち、札幌ドームでその素晴らしさに涙した。『Japonism』は「外から見た日本」をテーマにして制作された。本作のリード曲“心の空”は嵐の依頼で布袋寅泰が作詞・作曲を手がけたもので、強く鳴り響く布袋のギターと、和太鼓と三味線の交わりに、日本らしい美学を感じるダンスナンバーになっている。「サムライ」、「ゲイシャ」ではない、現代版にアップデートされた「外からみた日本」の姿が凝縮されている。ライヴの演出では、それが日本の伝統的な色使いや、着物風の衣装、和傘、桜など、見た目にもわかりやすい。豪華絢爛な舞台演出が輝く「ジャニーズらしさ」と和の心の通った「日本らしさ」、嵐が自身の原点に立ち返り、自分達らしく昇華したことで結実した圧巻のステージだった。だが、彼らが与えてくれるのは受け身の感動だけではない。遠隔操作が可能なグッズのペンライトは、演出に合わせて会場を美しい景色を作り上げると同時に、自分の握っているライトが嵐と一緒に最高の景色を作り上げているという主体性を与えてくれる。「俺達が〇万人幸せにしてやるよ」というのがライヴでの松本の決め台詞になっているが、その言葉の通り彼らの巻き起こすエンターテイメントには常に驚かされ、また、たくさんの愛と勇気と元気をもらっている。
嵐は次にどんな嵐を巻き起こすのだろうか。昨年発売されたアルバム『Are You Happy?』はコンセプトにかっちりとハマった『Japonism』とは真逆で、「Happy」をテーマにファンク、エレクトロ、歌謡曲など様々なジャンルの音楽が詰まっており、はじめはばらばらな印象を受けたが、1枚聴き終わったときには心が楽しさで満たされていた。コンセプトという枠を外して、キャンパスいっぱいに今の嵐が思う幸せを描いていったら、いい1枚の絵が出来上がったというのが本作の印象で、その中にまた嵐の新しい姿を見た気がする。<Fighting! ハングリー ダイナミック でっかいその夢 Hunting>(”Don’t You Get It”)、嵐の切り拓く道のりの目的地はまだずっと先にありそうだ。

遠藤 瑶子